海

こねこの海のレビュー・感想・評価

こねこ(1996年製作の映画)
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あなたはきっと、神さまがついうっかりうっとりして、雲の上から落としてしまった天使なんだと思う。ほかの誰も持ってない温かさで、どんなことばでもたどり着けなかった心の底に、あくびをするくらい簡単に入り込んで、そのままそこで眠ってしまう。こぼれそうに大きくてきらきらの瞳を、キスをしたらもう長い間はなれないまぶたの内側に、いったいどうやって仕舞い込んでいるのかな。空を飛ぶ天使みたいに両手をあわせて宙をひっかいて、いったいどんな夢を見ているのかな。両手でくるんだら林檎よりも小さくなっちゃうその頭で、どんなにたくさんのことをおぼえているのかな。今日はこんな夢を見たよ、もうごはんの時間だよ、今日の指先をおしえてよ。抱きあげて頬をあわせてくちびるをくっつけるのは愛のしるし、あなたという幸福のいずみで、永遠に世界を愛する歌を歌いたいの。クリスマスの夜にシャンパンをあけて、家族みんなで食卓を囲んで、虎模様のこねこを順番に抱きしめる。この時の幸せをおもいだすには、あなたの体温でもう十分だから、もう何もほかには約束なんて要らない。電気の切れた部屋に、凍えるように寒い部屋に、いくつもの天使の魂が舞い降りる。すっかり冷たくなったからだを抱きあげて、でもいつのまにかやっぱりあなたのほうが温かくなって、シャンパングラスとミルクのお皿で乾杯をする。天使たちの歌う声が寒い空いっぱいに響き渡る、愛をぐるぐるにからだに巻きつけた猫たちが街中を駆け回って、昨日よりまた一つ温かい冬の夜が生まれる。あなたのもとに、わたしのもとに、舞い降りた天使をどうか見すごさないで、幸せとは祈りで、願いで、愛で、祝福。その温もり。
永遠に、わたしのオールタイムベストクリスマスムービー。
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