西東京

怒りのキューバの西東京のレビュー・感想・評価

怒りのキューバ(1964年製作の映画)
4.5
カメラが追従する各人物と観客が縄で縛られているように、全く離してくれない。人物に起こる悲劇とそれに対するリアクションを一時も見逃させないように、なにがあっても食いついてくるから疲れる。俺かスクリーンのお前か、どちらかが死ぬまで解放されない主人公と観客との間で結ばれた地獄の関係。

仰角で映される主人公の周りの背景はヤシの木や太陽、青空で彩られる。この自然は燃やされ、破壊され、また自ら燃やし、景色が変化する。1話目では夜から朝の変化でキューバの貧民が太陽の下に露わになる。そして全てが過ぎ去った後、カメラ(観客)は解放され、もうその時には変化し終えた風景を眺めることしかできない。有名な中盤の長回しは主人公の葬儀。観客に張り付いていた人物が死に、カメラは行き場を失った魂のように街を浮遊する。息苦しさからの解放は、虚脱感を残す。ラストはプロパガンダ丸出しで引いちゃうし、斜めのフレーミングはあまり好きではないけど、ギリギリを攻める大胆なスペクタクルは圧倒される。特にドライブインシアターの火災とそこからの逃走は本物の事故現場の体感。あと車のスピード全部速い。
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