じゅ

ファニーゲームのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

ファニーゲーム(1997年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭のオペラをぶっ壊すメタル的な曲からして威勢がいいなって思ったけど、そんなんただのBGMでしかなくて印象に残らないくらい本編が凄い。本作はまじでやばい。
いやあの曲も単体で聴けばだいぶ印象的で良いんだけども。

ゲオルグとアナの夫妻と息子の3人家族が別荘に来たら隣家に知人の他に見慣れぬ青年がいて、パウルとペーターと名乗る彼らはこの家族にも接触してくる。初めこそ礼儀正しくしていたが、アナに分けてもらった卵を落としては新しい卵を要求したり、携帯電話を水没させたり、ゲオルグのゴルフクラブを借りて出て行ったり、まるでアナやゲオルグを怒らせようと挑発するかのような行動を取る。
夫妻がついに怒るとパウルとペーターが本性を表す。ゴルフクラブでゲオルグの脚を砕きそのまま一家を制圧すると、3人を玩具のように扱った末に息子を射殺する。一度出て行った隙にアナが助けを求めに脱出するが、2人はアナを捕まえて戻ってくる。ゲオルグを射殺し、アナをボートに乗せてセーリングに出てそのまま湖に落とす。
パウルとペーターが湖から戻ると、その足でパウルは別の家の者へ接触しに行った。


被った猫を脱ぎかけてるところって一番気持ち悪いと思ってるんだけど、このパウルとペーターは猫半被り期間が異様に長くて途轍もなく気持ち悪いんだよな。
暴力で身体的に制圧したらしっかり精神的にも制圧してくる。相手を怒らせるための非礼を全部棚に上げて、相手が怒った非礼を全力で揚げ足取ってくるかんじの嫌悪感がまじで凄い。

てか、犬と子供を先に殺しやがったwまさかすぎるだろ!
その前にも、冗談でもペーターが薬を打って母親と性交している話をしてみたり、頭に枕カバーを被せて絞めてみたり、子供の扱いがやばいて。その末にライフルで吹っ飛ばしてしばらくそのまま転がしてたな。


アナが不意をついてライフルを取ってペーターを撃ち殺した。直後、銃を取り上げたパウルが何故かテレビリモコンを探して、何をするかと思いきや物語を逆再生してペーターの射殺を無かったことにした。なんだそれ。
その後悠々とゲオルグを射殺した。拘束したままのアナを湖に連れて行って、アナがこっそり取り出したナイフも当たり前に取り上げて、さらっと湖に捨てて行った。


まとめると、個人的な本作のえげつない嫌悪感の要因って、主に2つあると思ってる。
・意思疎通できるっていう人間っぽさと、理由が全くわからないとかそもそもの残虐性っていう非人間っぽさが自然に混ざってる不自然さ
・反撃の可能性を見せながら潰すっていう一方的な暴力の徹底ぶり


U-NEXTでは「ユーモアとして消費される暴力へのアンチテーゼとして製作された」と紹介されていた。
ユーモアとして消費される暴力ってどういうことだろう。トムとジェリーみたいなこと?あるいはユーモアというよりエンタメと言う方が近い?まあ何にせよお楽しみ要素として消費されるものとしての暴力に異を唱えてみたわけか。
そういうテーマのための第四の壁破壊ということか。加害する者が勝つか被害を受ける者が勝つか、「おまえら(視聴者)はこいつら(夫妻)の味方だろ」みたいなことを画面外の我々に言った上で、嘲笑うかのように加害側が完全勝利をおさめてみたり。

まあそりゃあ暴力って本来はおもしろみとかスッキリみたいなもんの対極にあるものだわな。特に、腕っぷしが弱いとか怪我とかで思うように身体が機能しないとか、様々な要因で反撃できない者にとってはなおさら。
しかも往々にしてその暴力に巻き込まれる必然性などないこともある。


繰り返し言う。本作はまじでやばい。たぶんもう観ない。
でもきもいものをきもいと思う感性が生きてるうちに観れてよかった。
じゅ

じゅ