深獣九

ファニーゲームの深獣九のネタバレレビュー・内容・結末

ファニーゲーム(1997年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

この結末は正直言って、ちょっと耐えられない。胸糞を超えて吐き気をもよおす。まんまと監督の思惑通りになったかと思うと、なおさらムカつく。ちくしょう。





いきなりネタバレだが……。




この映画は悪党が罰を受けない。こんなに悪いやつなのに。いや、“悪い”なんて言葉では生ぬるいほど。“極悪”って言葉でも物足りない。それなのに、のうのうと人生を謳歌している。釈然としない。おかしいだろ?
だからこの悪党ふたりを、悪魔か呪いのたぐいと思うことにした。それならば家族は、もう最初から助からない運命だったと割り切ることができる。そうだよ、そう思えば少し落ち着いてきた……くそぅ!

作品作りの手法として気になった点を3つほど。

・完璧なサイコパス
・見せない暴力シーン
・暗喩

○完璧なサイコパス
悪党ふたりは完璧なサイコパスを演じている。サイコパスの特徴を上げておく。

・すべてのことは相手のせい思っている。苦しみも痛みも。
・相手の気持や痛みを感じない。苦しんでるのは自業自得だと思っている。
・ゆえに紳士的な態度を取るし激昂しない。
・計画的で用意は周到。だから常に手袋をはめている。
・潔癖症。物事が計画通りに進まないのを嫌う。
・葛藤や倫理観はない。そういうものは、計画を進めるのに邪魔だと考えている。
・計画に邪魔なものを排除することに躊躇がない。

いかがだろう。まさにあのふたりではないか。スタッフはよく調べているし、役者は完璧に演じていると思う。

○見せない暴力シーン
本作はゴアシーンがほとんどない。まあそもそも不要ではあるが。
ではどうしてるのかというと、音と声で伝えている。これが逆に怖い。敬愛するホラー作家の平山夢明先生は、こうおっしゃっている。相手を最も怖れさせる方法は、これから行う拷問を語って聞かせることだと。本作はまさにこれを体現している。

○カメラ目線
悪党のひとりパウルは、ときおりカメラ目線でセリフを言う。まるで私に語りかけるように。これが実に気味悪い。全部で3回ほどだが、そのたびに私は凄惨な現場にいるような感覚に陥る。さらに仲間にされているような気分になる。これも監督の思うツボなのだろう。頭にくる。

○暗喩
何度も割れる卵や真っ白な衣装など、聖書や神話を思わせる。ゲームの期限が12時間というのも気になる。詳しくないのでわからないが。


不条理極まりない本作。確実に落ち込みたい、嫌な気持ちになりたいときにはおすすめだ。そんなときがあるのかどうか知らないが。それから悪魔・呪い説を裏づけるようなシーンもあるので、苦手な人は注意してほしい。

ラスト、パウルがずっとこっち向いてるの本当にイヤだ。
深獣九

深獣九