Jun

ファニーゲームのJunのネタバレレビュー・内容・結末

ファニーゲーム(1997年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

優雅にクラシック音楽が流れるドライブシーンで突如デスメタルに転じる冒頭が提示しているように、前触れ無く日常に暴力が挟まれる様子が平然と描き出されている。平穏な一家が巻き込まれる不条理な支配に救いは一切無く、徹頭徹尾暴力に対する不快感を覚える映画体験だ。

作品を紐解いて見て取れることには、恐らくは娯楽として安易に消費される暴力性の否定だ。勧善懲悪のアクション映画であれば、主人公が仇を亡き者にする場面で異論を唱える者はいないだろうが、肩入れしている感情を抜きに考えればどうだろうか。作中、唯一反旗を翻す場面として母親のアナが猟銃を発泡する場面が挙げられるが、理不尽にもリモコンの"巻き戻し"によって銃を奪えなかったシーンに改変されてしまう。犯人は第四の壁を超えて観ている者をしばしば挑発し、私たちは為す術もなく溜飲を下げることを許されない。バイオレンス映画でありながらジャンル映画の暴力に対する否定は、実は直接的な暴力描写が少ないことからも伺い知れる。そう考えると、テレビに血しぶきのかかったカットもまたアンチテーゼの装置として映るのではないだろうか。
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