TOMJFK

引き出しの中のラブレターのTOMJFKのネタバレレビュー・内容・結末

引き出しの中のラブレター(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

癒しと温かさの映画。函館いいです!

人の気持ちに染み入る、癒しと温かさの映画。 たくさん泣けるシーンがあり、見終わって温かな気持ちになります。
人は傷つきやすく、人の心にはたくさんの葛藤や、悩みを抱えている。
「つまらない小さなこと」と見えることでも、本人には重要で気になるもの。
そんな人の内面を大事にしながら描かれる映画で、観ていて好感が持てます。
さらに人物を追うカメラもゆっくりアップにしたり、ゆっくりと“動き”があり、映画全体に情感が漂う。

大都会:東京と、地方の町:函館。
この2つの街と町を、交互に描く見せ方も魅力的でした。
そこでは九州など全国から働きに来ている者たちの様々な想いを飲み込む、大都会の姿が浮かび上がる。
東京タワーを中心とする夜景の中にも、また昼間のオフィス街の雑踏の中にも、たくさんのドラマが存在しているはず・・・。 そんな思いに駆られます。
一方、北海道、函館の町は人情豊かで、ゆっくりしている。
都会の慌ただしさが無い、「癒しの町」のイメージで対照的だ。
そこで生活する寡黙な漁師、恭三(仲代達矢)。
真生(常盤貴子)が、謝罪のために初めて函館に来たときには、「面白半分の気持ちで、関わるな!」と迫真の怒りを見せる。 しかし、後半には40年間別れたままの妻に対し、非情に繊細で紳士的な文章の手紙を書き、最後には真生に「温かな笑顔」を見せる。
たいへん真剣さと深みある演技で素晴らしい。
テレビ版「セカチュー」の中での、おじいちゃん役の仲代を思い出しました。
また、娘(由梨:中島知子)を心配し、それでもどこまでも優しい、母:八千草薫。 いつまでも素敵な方です。
当初、幾つかのストーリーがそれぞれ別々に展開し、「後半、どのようにつながってゆくのだろう?」とワクワクし、最後には「なるほど!」と納得感もありました。
大事なラジオ番組を、無事に大成功で終えた真生。
スタッフが指差す窓の外を見ると、番組に感動した大勢の視聴者が、終結して大拍手。
感動的なシーンですが、これは、『ペイ・フォワード』(アメリカ2000年作品)や、テレビ『1リットルの涙』のラストにも使われた手法。
予想した展開でしたが、それでも、ここはこれで良いと思いました。
確かに細かい点を言えば、物足りないことも有るかもしれない。
例えば、函館の高校生、速見直樹(林遣都)とクラスメイトの黒沢留美(水沢奈子)の関係。
映画の冒頭から、この2人が描かれながら、ほとんど展開が進まぬまま、エンドタイトルの時に、「ラブレター」を彼女が渡すというシーンが出るくらいでしたから、これは勿体無い。
またラストで、ラジオ局の竹下(吹越満)が落とした携帯のストラップを見て、拾った可奈子(本上まなみ)が意味深の表情で、後を追う。
このシーンはまだ理解できていません。
などなど、突っ込みたいところは無いこともないですが、函館ロケということで私は許してしまいます。
函館ロケの映画としては、一昨年の「little DJ」と共通するテーマ・・・ラジオを通じた人間ドラマ・・・であり、この2作は函館ロケ作品の中でも、今後も残る良作だと思います。
2009/10/19
TOMJFK

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