あーさん

しあわせの雨傘のあーさんのレビュー・感想・評価

しあわせの雨傘(2010年製作の映画)
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ハイセンスな色使いのパッケージ、大好きなカトリーヌ・ドヌーヴ…でも、何故ジャージ⁈

そんな疑問から手に取った、今作。
買って良かったー!

フランソワ・オゾン作品は、"まぼろし"しか観ていなくて、あちらは最初に観るには少々難易度高めだったのか、かなり癖が強い印象だった。だから、こちらも心して挑んだのだが、、

舞台は1970年代後半のフランス。
雨傘工場を経営する夫(ファブリス・ルキーニ)を持つスザンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、詩を作ったりジョギングをするのが日課のブルジョワ主婦(?)。
心臓発作で倒れた夫に代わり、彼女が工場の経営するようになってから、飾り壺(potiche)と揶揄されていた自分の誇りを取り戻し、それを機に広い世界に飛び出して、、というストーリー。
元は戯曲で、監督がそれをアレンジしたという。

とにかく、ドヌーヴも関わったという錚々たるキャストの顔触れ!

創業者の父に似て人を大切に想う、自然体で明るいスザンヌを見事に演じたドヌーヴを始め、実にいやらしい夫(ルキーニ曰く下品で無能で洗練されていない男!笑)役のファブリス・ルキーニも気持ちいいほど自分の役を楽しんでいる♪
先の大統領選で、男性優位主義を感じたという監督の想い(イタリアのベルルスコーニ、ほぼ名指し!)が反映されている役だ。
ファブリス・ルキーニもいろんな作品で活躍されているな、と改めて。
この前フォロワーさんと録画したまま案件〜と話していたエリック・ロメールの作品に出ているではないか!→こういう繋がりで、観たい作品が増えるのは嬉しい♪

秘書ナデージュ役のカリン・ヴィアールもただの脇役に甘んじていなくて、存在感バリバリ!
ボンキュッポンのメリハリボディを遺憾無く発揮している上に、夫の愛人という微妙なポジションをコミカルにかつ魅力的に演じていたのが良かった。彼女が変わっていく様子も見所。

スザンヌの若気の至り?の相手で、工場のストの仲裁に入る左翼市長のババン(ジェラール・ドパルデュー)は、巨体なのに心は繊細な所がいちいち可愛らしい。。
けど、怒らせたら…!な所も見ていてハラハラ・ドキドキ。
この方の中世顔は、日本で言う所の時代劇顔⁈笑(1980年にドヌーヴと"終電車"で共演しているが、あの頃とは随分ルックスも体型も変わってしまった…)

スザンヌの息子ロベール(ジェレミー・レニエ)、娘ジョエル(ジュディット・ゴドレーシュ)のキャラもしっかりと描かれていて話のスパイスになっていたし、監督の好みなのか、一つの作品内でこれだけの美男美女が目白押しなのは、眼福と言う他ない。

それぞれが決して妥協せず、はっきりと自己主張する現場をまとめ上げた監督の采配!

特典映像を見る限り、監督によるキャストのファッション、インテリアへの細かなこだわりが物凄くて、きっと現場は大変だったと想像される。
傘の色から置く位置、眼鏡をかける・かけないでキャストやスタッフ、監督が喧々諤々になっていて…でも、それが良い作品になる一過程だと皆が納得しているのだな。

故に、ストーリーの面白さもさる事ながら、映画が総合芸術だということを、端から端まで感じられる作品になっていた。

ラストは、収まるところに収まらず、そう来たか!な幕切れにやっぱりフランスだなぁ♪と腑に落ちる。
誰かにおもねって生きることをやめた時、目の前に現れた道に新しく踏み出せる女性がどれだけいるだろうか。
万人ができる選択ではないけれど、爽快な結末♪
女性差別や女性の自由を軽快に明るく描いている、という監督、ドヌーヴの言葉通りだった。


こういう作品、どんどん観ていきたい!
元気が出る♪



**
特典映像の舞台挨拶で、どこにこんなイケメン俳優出てた⁈と思ったら、監督だった。。😅
10年ほど前の作品だから40代。
華があってカッコいい!
今更だが同世代と知り、応援したくなった♪





個人的MEMO

時代設定があるコメディは難しい    
by ドヌーヴ  c.f. "うず潮"

ルイ・ド・フュネスの女性版
→喜劇女優ジャクリーヌ・マイヤンのイメージとは違うものにしたかった

"子どもの世話は誰が?"
by ローラン・ファビウス
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