テルヒサ

機動警察パトレイバー THE MOVIEのテルヒサのレビュー・感想・評価

4.9
ヤハウェは、何を望んだのか。
序盤のミステリーパートから一転、中盤からの神話と現実世界とのシンクロ、塔の解体シーンなどの不気味さ、神秘的な部分に魅了される傑作。
89年にコンピュータウイルスに絡めた哲学的なストーリーを考えて作る押井守チームには敬服。
しかし最後になぜ帆場は鳥に場所を特定させたのか。もしかしたらバビロン計画の中止、東京の原風景の維持または忘れられる過去のものへの想いがあったのかもしれない。いずれにせよ、後藤の言葉がこのストーリーの芯をついている気がする。
現場で翻弄されるレイバー隊員たちの活躍も面白かった。みんなキャラクターが立っているからドキドキできた。そのことによる不気味なシーンとのギャップが効いていて、恐怖感を掻き立てる見事な演出。
BABELが表示されるシーンは記憶に焼き付けられる。まさに言語の混乱によるバベルの塔崩壊になぞられていて、それが近未来のSF的世界観で描かれるのがなんとも言えない快感。
東京の原風景や風の強い夜に海に浮かぶ真っ黒い塔など、世界観を引き立たせる広い画が超見どころ。全体を通して不穏な空気感へのシフトも見事だった。
冒頭も良い。映画として最高の始まり方だった。暗いシーンから着地のために一瞬ライトをつけてレイバーが見えるなどなど。
帆場なんて男はもしかしたら最初からいなかったんじゃないか、と思わせる流れは押井監督のオハコで流石のもの。その存在そのものが疑われる神にもそのイメージが重なっていて、大きさや実態が見えない敵との戦い、という展開はやはりSF作品にめっちゃ合う。
何度でも見たいと思った。
「アルフォンスは、いつだって最高だよ。」
テルヒサ

テルヒサ