イチロヲ

吸血鬼ゴケミドロのイチロヲのレビュー・感想・評価

吸血鬼ゴケミドロ(1968年製作の映画)
3.5
山岳地帯に不時着した旅客機の乗客たちが、地球外生命体に憑依された吸血人間の恐怖に晒されてしまう。異形のものを目の当たりにした人間たちのパニック状態を描いている、松竹産の怪奇映画。

シャンソン歌手の高英男が、吸血鬼役を熱演。まさに「キャスティングの妙」であり、ただ棒立ちになっているだけで「怖い!」と思わせられる。しかし、動きがあまりにも遅いため、「全力疾走で逃げられるのでは?」というツッコミが大半を占めてしまう。

徹頭徹尾、不穏な出来事が釣瓶打ちのように巻き起こるところが楽しい。セリフ劇が主体となっており、多種多様な境遇にある乗客たちが、裏の顔を表出させながら、ドロドロの人間ドラマを繰り広げていく。

大人になってから再鑑賞すると、吸血鬼の額の亀裂に奇妙なエロスが感じられる。液状の本体が入りきった瞬間には、この世ならざるエクスタシーが発生しているに違いない。ちょっとだけ、経験してみたいかも。
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