ぼさー

眠り姫のぼさーのレビュー・感想・評価

眠り姫(2007年製作の映画)
3.8
よしもとばなな著『白河夜船』と似ている。現実社会に馴染めない、あるいはリアリティある生活に違和感を持っているがために眠りや夢の住人になろうとする主人公の女性。

寝覚めのタバコ、長い付き合いの彼氏とのセックス、そういった快楽のリアリティは、どこか眠りや夢や遠い記憶から呼び醒まされるように感じさせる。

全編を通して断片的な映像による夢遊感が表現されているようだった。作為あるピンポン玉の跳ねる映像のリフレインが差し込まれ、心地よい声や環境音は脳内で反響しているような感じで、夢の中でくっきり聞こえてくるようだった。

夢の映像化といえる。白河夜船で隣に寝ている男性の夢を自分も見てしまうように、この作品の主人公の夢の世界を我々も見てしまうのだ。夢であるが故に、どこか自身が投げやりで無責任な世界。恋人にアナルセックスを強要されても「どうせ夢の中だから、ま、いっか」というような受け入れの仕方をしているようだった。

この作品のテーマは何かと問われたら、それは人生や日常の予期せぬ出来事を夢物語として受け入れてみるのもいいかもしれない、夢を受け入れるように困難を受け入れられれば、親しい人の死までも意外と乗り越えられるかもしれない、ということではないだろうか。

そんなふわふわとした春の暁の暖かく浅い眠りような作品だった。

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七里圭監督のトークイベント付き上映を鑑賞。助監督を長くやっていて侯孝賢監督の『珈琲時光』では時間があったので手伝っていたとのこと。日本では監督がOK出したらそのシーンは終えて次の撮影に移るが侯孝賢監督はOKを出したシーンをまた撮り直すことが多々あって日本の映画会社は呆れて勝手にやってくれという感じだったので七里圭監督も手伝えたとのこと。

侯孝賢監督のそのOKのこだわりに影響されて『眠り姫』ではじっくり納得のいくまで撮影したとのこと。
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