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十二人の怒れる男のYYamadaのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.2
【法廷映画のススメ】
『十二人の怒れる男』(1957年)
〈フィクション
  (1950年代 / ニューヨーク) 〉

◆法廷の争点
第一級殺人事件に問われる18歳の少年。死刑執行を回避出来る唯一の方法は、陪審員12人全員が無罪評定をすること。

〈見処〉
①名匠シドニー・ルメット監督による、
 全ての映画ファンに贈る不滅の名作!
・『十二人の怒れる男』(原題:12 Angry Men)は1957年製作のアメリカ映画。
・本作の舞台はニューヨークの裁判所。父親殺しの罪に問われた18歳の少年の裁判で、陪審員12名が評決に達するまで一室で議論する様子を描く。
・法廷に提出された証拠や証言は被告人である少年に圧倒的に不利なものであり、陪審員の大半は少年の有罪を確信していた。全陪審員一致で有罪になると思われたところ、ただ一人、陪審員8番(ヘンリー・フォンダ)だけが少年の無罪を主張する。彼は他の陪審員たちに、固定観念に囚われずに証拠の疑わしい点を一つ一つ再検証することを要求。
・陪審員8番による疑問の喚起と熱意によって、当初は少年の有罪を信じきっていた陪審員たちの心にも徐々に変化が訪れる…(Wikipediaより抜粋)。
・「法廷もの」に分類されるサスペンスドラマ・サスペンス映画であり、密室劇の金字塔として高く評価されている。
・本作品が映画監督デビューとなった名匠シドニー・ルメットは、1957年度の第7回ベルリン国際映画祭金熊賞と国際カトリック映画事務局賞を受賞、同年度のアカデミー賞でも作品賞を含む3部門にノミネートされたが、『戦場にかける橋』に敗れ、受賞には至らなかった。
・AFI (アメリカ映画協会)が2008年に選定したジャンル別ベスト10の 「法廷ドラマ」 で第2位に選出されている。

②名無しの配役
本作の陪審員12名全員が「役名なし」の「怒れる」男たちであるが、Wikipediaを見ると、細かい設定が確認出来、なかなか興味深い。ぜひチェックしながら鑑賞を!
【陪審員1番(陪審員長)】中学校の体育教師でフットボールのコーチ
【陪審員2番】 銀行員。気弱だが慎重に無罪説に同意する。
【陪審員3番】直情的な会社経営者。息子との確執から、最後まで有罪意見に固執。
【陪審員4番】株式仲介人。冷静沈着な性格で論理的に有罪意見を主張。
【陪審員5番】工場労働者。スラム育ち、ナイフの使い方に関して、経験を述べる。
【陪審員6番】塗装工の労働者。義理、人情に篤い。
【陪審員7番】食品会社のセールスマン。ヤンキース観戦のため時間を気にしていたが、夕立で試合が流れ面倒くさくなる。
【陪審員8番】 建築家。検察の立証に疑念を抱き、最初から無罪主張した唯一の人物。
【陪審員9番】80歳前後の老人。8番の意見を聞いて最初に有罪意見を翻す。鋭い観察から証人の信頼性に疑問を投げる。
【陪審員10番】居丈高な自動車修理工場経営者。貧困層への偏見を持ち、有罪を主張。
【陪審員11番】ユダヤ移民の時計職人。誠実で、陪審員としての責任感が強い。
【陪審員12番】 広告代理店宣伝マン。スマートで社交的だが軽薄な性格で、何度も意見を変える。

③結び…本作の見処は?
◎: 高度なリベートにて対立する意見を持つ陪審員たちを翻意させていく流れが痛快。日本やロシアなど、多くのリメイク作品が製作されるのが納得の良く出来た脚本。
◎: アメリカの陪審制度を知ることが出来る、生の教科書的な作品であり、劇中のセリフのとおり「これが実は民主主義の素晴らしいところだ」
○: 密室劇、狭い空間によるカメラワークも素晴らしい作品。
×: (本作の出来とは関係ないが)、日本の一部の野党政党が、自らの政党の立ち位置を本作を例えとすることがあり、映画ファンとして腹立たしい。本作はフィクションであり、また、「共産主義」の社会実現を描いていない!!
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