ペコ

十二人の怒れる男のペコのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.6
この名作を今更レビューなんて烏滸がましい気もしつつ…

密室の会話劇だけで90分間ずっと緊張感を持続させるこの映画の作りについて、その凄さはもはや骨の髄まで語り尽くされていることかと思いますが、徐々に十二人の熱気が増していく最中、夕立→扇風機の演出で部屋の温度も白熱した議論もスッと冷める場面、自分もその場にいるかのような肌に伝わってくるリアリティもまた名作たる所以の一因かと思いました。

なんなら途中からは本当にこの事件はあったのかもとさえ思いながら、自分だったらどの立場だろうかと、ずーっと頭をフル回転させていたので、観終わった後とても疲れました…笑

この映画の一番の好きポイントは、これほど喧々諤々熱い議論を交わしているのに、お互いの名前すら知らないままという点ですね。菊次郎の夏やインセプションを想起させるクールな別れ際、十二人がそれぞれ元の生活に戻っていき(がしかし確実に前とは違う何かを持ち帰って)…後には爽やかな余韻だけが残されています。
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