Keigo

十二人の怒れる男のKeigoのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.4
シドニー・ルメット監督作品はこれが初。
監督にとってもこれが最初の作品のようなので、初シドニー・ルメットにはもってこいだろうということで。

これは面白い!
観た人と何時間でも、いろんなところに派生しながらダラダラと話せそうな語りしろのある作品。この時代の作品でそれなりの数の Mark! が付いていて、かつ平均スコアが高いのも納得!モノクロだろうと予算がなかろうと場所が限定されていようと、面白い映画は作れるということを証明する時にはそれこそ、最も有力な証拠になりそうな作品だ。

映画としてあらゆる点で、というよりも設定と脚本の力だけでここまで面白いモノが作れるということのお手本でもありながらもはや最高到達点でもあるかのようで、そういう意味では演劇とものすごく親和性が高いだろうからそのまま演劇にも出来るだろうし、全然知らないけどすでにたくさんやられてるだろうと思う。いろんなところでリメイクされたりされなかったりしながら。

ある事件の裁判に関する物語ではあるけど、法廷モノというよりは個人的にはもうほとんどソリッドシチュエーションスリラーを観ているのに近い感覚だった。集団における意思決定と同調圧力。人間というのは恐ろしいし、人が人を裁くというのは本当に難しいなと。

近いところで観た作品で言うとタランティーノの『ヘイトフル・エイト』もそうだったけど、こういう限定的空間での会話劇みたいなのが自分は好きなのかもしれない。なんなら恋愛リアリティショーとかですらこういう目線で観てる時あるもんな。


この作品を観た人は陪審員8番のヘンリー・フォンダに対してどんな印象を持つんだろう。そこにすごく興味がある。正義感溢れる素晴らしい人物だと思うのか、それとも否定的な印象を持つのか。僕はものすごく知的で善良な人間のようにも見える一方で、狡猾で人心掌握が巧みな危険人物のようにも見えた。この裁判に対しての陪審員が出す答えとしては無罪で良かっただろうと思うし、彼の主張に決定的な破綻はなかったけれど…あまりにも華麗に逆転してみせた彼のことが最後まで掴めなかったのには、うっすらと怖さが残った。

観客は陪審員の会話から徐々に事件の全容を把握していくことになるけど、展開の肝になる決定的な瞬間の要素が裁判中の証人の様子なら、どうせなら裁判のとこから観たかったような気もするけど、そもそもそこじゃないんだろうなやりたかったことは。結局少年は父親を殺したのか否かという真実に辿りつくミステリーではなく、あくまでもあの部屋の中にいる陪審員である人間達の観察。

細かいところで言えば気になることもなくはないし、つぶさにみていけば多少のアラも強引なところもあるだろうと思うけど、登場人物みな個性が立っていて素晴らしいし、繰り返しになるけどあの暑苦しい部屋の中だけでこれだけ面白いモノを作ったことはやっぱり素晴らしい。

シドニー・ルメット監督すごいな。今作に関しては脚本家が評価されるべきところも多分にあるとは思うけど。

序盤にに一瞬だけ顔が映る容疑者の少年の表情がまた良いんだな〜。絶妙にどっちとも取れるような顔してて。

めちゃくちゃ面白い作品でした!
あっぱれ!


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