ジュライ

十二人の怒れる男のジュライのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
5.0
面白い!!
古い作品なのにテンポがよく、ダレ場が一切ないので目が離せません。

これって普通だったら、監督や脚本家は12人それぞれの人物像や人生をもっと掘り下げて説明したくなると思うんですよね。
この人は現在妻と別居中でとか、あの人は仕事をクビになりかけでとか、こっちの人は万年不眠症でとか。そして上映時間3時間弱の作品になる。
でも本作においては極めて断片的な情報が垣間見える程度にすぎず、にもかかわらず、ちょっとした言葉の端々から人となりが把握できるシナリオで、非常に巧いです。
公正で怜悧で優しいマッカードルじいさま素敵。

最初はたった一人の無罪派の論拠が「分かんないけど、もしかしたら無実の可能性もあるかもだし」って程度であまりにも弱いんだけど、だんだん推理が深掘りされていき、反証として形を成してくるにつれてのカタルシスがすごい。
しかもそこまでしてもなお、その推理が真実かどうかよりも、「人命が懸かっている以上は“疑わしきは罰せず”が原則であり、それを民主主義で行うことに意義がある」というところが眼目なのですよね。

最後の一人が無罪派に転向するところで彼の心境を長々語らせず、「無罪だよ」の一言に万感の思いを託した脚本で、それをほぼ完璧に演じきっているのも見事の一言。


観ながら、むかし裁判員やった時のことを思い出しました。
私はまた何度でもやりたいんだけど、裁判官曰く、たいていの人は「二度とやりたくない」と言うそうで。なぜ?
ジュライ

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