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十二人の怒れる男のvioletのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.5

ずっと観たかったやつ。
決して派手さはないワンシチュエーションの会話劇だけど、ラストの静かな畳み掛けには鳥肌が止まらなかった。余韻を残さず歯切れよく終わらせる潔さが好き。結末が明らかになってからのシークエンスなんて、どうせ結末そのもののインパクトで掻き消されるわけだし、あれぐらい短くていいと思うんだよ。

「疑問がある限り有罪にはできない」
そりゃそうだ。犯罪者を野放しにしてしまうかもしれない可能性と、無実の人を死に追いやってしまうかもしれない可能性があるわけだけど、初めの投票では12人中11人が後者の可能性を一切考慮していなかった。そんな中たった1人の男は両方の可能性を認識し、冤罪を危惧した。先入観や偏見とは距離を置き、状況を客観的に分析した彼の主張にだんだんと賛同者が集まる様子はいたって自然で面白い。

死刑制度を実際に廃止している国や死刑反対派の主な意見は「冤罪の可能性がゼロにならない限り、死刑はあってはならない」というもの。
この主張には反論できないし、逆に存続派のどの主張にもこのカードがカウンターとして使えてしまうというのが、ある種この議論をいっそう複雑化させる要素になっていると思う。

人が人を裁く以上、エラーはいくらでも発生するし、これまで冤罪を受けた人や冤罪で極刑を受けた人の数を想像すると恐ろしい。先進国の中でも数少ない、死刑制度を存続している国に住む者として、改めてこのディベートについて深く考えさせられた。
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