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十二人の怒れる男のpepeのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.2
翻案された作品はいくつも見たことがありますが、オリジナルを今回初めて観ました。当たり前に、面白い。濃密な会話劇の中に、事件の推理、人が人を裁く危険性、人種差別や偏見などさまざまな要素が詰め込まれ、手に汗握るばかりでした。脚本がうますぎる。これは未来永劫そう感じられていくのでしょう。

「本気じゃないんだろ?」

このセリフで一瞬にしてがらりと空気が変わったのが感じ取れて、しびれる思いがしました。台詞の応酬のうちに不意に飛び出す、劇的なカードの切り返し方の最上級を改めて観た気がしました。

モノクロの画面だからこそ、劇中の彼らが次第に額やシャツに汗を浮かべていく様がよりリアルに感じ取れ、強く降る雨音は不協和音として男たちのざわつく心中を浮き彫りにしているかのようでもありました。

長く残っている作品の膂力というものを知らしめられた作品でした。
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