Kei

十二人の怒れる男のKeiのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
5.0
12人の陪審員が少年による父親殺害事件の判決を下す。
最初は少年の無罪を主張していたのはヘンリー・フォンダ演じる陪審員8番だけであったが、議論が進むにつれ当初有罪を主張していた他の陪審員たちは無罪へと意見を変えていく。
本作品は人の考えがどれ程真実に基づいていないかを鑑賞者に伝えていた。
陪審員たちが持つ私情・偏見の存在、目の前にあるものの見逃している事実、検事側が立てた証人による証言の虚偽の疑いが明らかになるにつれて陪審員たちは少年が殺人を犯していない可能性を徐々に認め陪審員たちの意見は少しずつ変わっていく。
本作品を鑑賞して、根拠を持って意見を主張するためには自らの考えを言語化し整理することが重要ということや物事をより正確に理解するためには自分と異なる意見に耳を傾け多面的な視点や多様な情報を獲得することが重要だということ、また真実を捉える上で自分の持つ私情や偏見が邪魔をしていないかを自分自身で確かめることや物事を断定する際には断定出来ない可能性がないかを逐一確認することが重要だということを学んだ。
作中では、陪審員であるにも関わらず私情を持ち込む者や偏見を持つ者、目の前の事実を見逃している者や証人による証言が虚偽である可能性を考慮しない者を断罪することは行っていなかったと思う。
真実を捉えることを意識し努力しなければ真実を捉えることは難しいからこそ、人は誰しもその事を意識していく必要があるということを伝えているのだと感じた。
また、演技に関してはリー・J・コッブの見る人をイラつかせる分からず屋の演技がとても上手かったと思う。
加えて、最後まで少年が実際に殺人を犯したのかどうかを明らかにしない作りが良いと思った。
人間が真実を捉えることの難しさを描いた良作。
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