ざき

十二人の怒れる男のざきのネタバレレビュー・内容・結末

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ここにいる役者は全員もうこの世にはいない、という事実。鑑賞した2024にて、実に67年前の作品。この低予算による密室×会話劇の金字塔がのちに多大なる影響を与えたことは、私のような映画通でなくとも想像に難くない。

冒頭「暑い」発言からタイトル通りの苛立ちを予見させてくれる。事実モノクロ映像でもはっきりとわかるぐらい、陪審員たちのシャツは汗ばんでいく。それは何もただ空調の効かない部屋に閉じ込められているからだけではないだろう。

「果たして簡単に若者の命を死刑としていいのか」
という命題から始まる論議はまるでドキュメンタリー。こういった話し合いに感情は必要ない。にもかかわらず、まるで終着点の見えない会社の会議よろしく、陪審員たちは怒りを昂らせてゆく。けして熱すぎず、あくまで平熱を保ちながら。この、過剰に演技を上乗せしない脚本はさすがといったところ。

劇中の夕立から雨上がりの最後のシーンは、ベタながら陪審員の心境をわかりやすく表現している。少年の行く末も大事だが、しかしこれだけいつ誰かが欠けてもおかしくない中、十二人の怒れる男たちは誰一人卓を離れず、納得のいく最後まで言葉を交わしたこと。それが何よりも私の心に残っている。
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