エイプリル

十二人の怒れる男のエイプリルのネタバレレビュー・内容・結末

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

ワンシチュエーションで基本は会話だけの映画なのですが、あっという間に時間が過ぎる面白い映画でした。会話劇のうまさ、それからストーリーの進行と共に信じられていた事実がひっくり返るのが爽快で目が離せませんでした。

今回のセッティングである部屋はまさに民主主義を象徴したような部屋で、多くの人は声のでかい人の意見に流されていますし、マイノリティは鼻で笑われています。有罪にしたい人も真面目に議論する気などなく「はよ帰りたい」という思いだけで参加しています。だから結局、多くの人にとって「有罪か無罪か」なんてどうでもよくて、「その場にふさわしい言動ができているかどうか」にしか注力できていないんですよね。それが少しずつ変わっていくのが素晴らしかったです。
それだけに後半に有罪派と無罪派の人数が入れ替わった時、ここはマジョリティとマイノリティの逆転とも言えるのですが、雰囲気も一気にひっくり返って面白かったです。

最後まで有罪を主張していた男は確かに乱暴で感情的なのですが、視聴者自身もどこか心当たりのある態度なのではないかと思いました。法は「疑わしきは罰せず」を原則としていますが、昨今は残虐な事件が起きると感情的に極刑を求める声が大きい気がします。これまさに、今作でヒール役を演じた男の態度そのものなんですよね。
この男も正義に燃える心を持っていたことはおそらく間違いないですし、最後には自身の親子関係の困難性を被告人に転移していただけであったことがわかるのもあまりにも人間らしくて好きでした。写真を破ることでそういう自分に気づき、解放されたかのように無罪を認めるシーンも感動的です。

個人的に好きなシーン、終盤で差別的発言をするお爺さんが話し始めたらみんな揃って立ち上がって壁を見つめるところです。絵面が面白過ぎる。ここ、有罪派の人も一緒に立っててめちゃくちゃ笑いました。
おじいさんの精神、崩壊しちゃった。
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