木野エルゴ

ある脅迫の木野エルゴのレビュー・感想・評価

ある脅迫(1960年製作の映画)
3.2
新潟銀行直江津支店の次長、滝田は本店への栄転が決まり順風満帆の人生を送っていた。頭取の娘である久美子を妻に持つ滝田の将来は明るく、彼の道を遮るものは何も無いと思われていた。ところが、滝田の前にヤクザ者の熊木という男が現れ、滝田にある書面を見せる。それは、滝田がかつて愛人を養うために印鑑を偽造し浮き貸し(金融関係者が不正に貸し付け等を行う行為)をしていた証拠だった。熊木は口止め料として滝田に300万円を請求する。期日は翌日の午前6時。すぐに用意できないと断る滝田に対して、熊木は金なら銀行にあるじゃないかと拳銃を渡す。逃げ場を失った滝田だったが、その夜の当直が自分のよく知る男、庶務課の中池であることを知りついに行動に出る。

中池は滝田の小学生時代からの同級生で、ノロマで貧相な目立たない男である。滝田の妻である久美子は、元は中池の恋人であった。さらに中池の妹、葉子も滝田の愛人である。今まで自分のために利用してきた中池を最後まで踏み台にしようと企む滝田だったが、事態は思わぬ方向に展開する…


昨日見たコメディ『酔いどれ幽霊』に続いて2作目の西村晃リレー。今回は地方の銀行を舞台に繰り広げられるシリアスなノワール作品で昨日との温度差に風邪ひきそう。

上映時間は1時間強。2時間ドラマよりも短く、派手なアクションもカーチェイスもない。ただ2人の男がそれぞれの思惑を持ちつつお互いをジリジリと牽制しあう。まるで小劇場で見る舞台のような密度。金子信雄と西村晃の眼力と語り口がとても魅力的で惹きつけられる。

音楽も必要最低限に絞って効果的に使われていて良い。

ラスト、電車の中でのシークエンスは流れが美しく、オチも潔くて大好き。

しかし、晩年は『水戸黄門』と『楽しい夕食』というお茶の間ほのぼの番組をしていた2人が若い頃はこんなにギトギトしたお芝居をしていたとは。驚き。
木野エルゴ

木野エルゴ