猫脳髄

ゾンゲリアの猫脳髄のレビュー・感想・評価

ゾンゲリア(1981年製作の映画)
3.7
黒沢清「ホラー映画ベスト50」(1993)第49位

ダン・オバノンが脚本で参加する異色のゾンビ映画。と言っても、ジョージ・A・ロメロ以降のサイエンティフィックな裏づけのあるゾンビではく、プレGARの古式ゆかしいブードゥー呪術のそれである。しかも普段は生者のふりをしてごくまっとうに日常生活を送っているという次第で、それがミステリ要素にもなっている。

ひなびた港町を訪れる人びとが次つぎと無惨に殺害されるという事件に頭を抱える保安官を主人公に据え、ゾンビ住民による殺人と捜査の様子をパラレルで見せていく趣向になっている。見るからに怪しい検視官兼葬儀屋を助手役にするが捜査は混迷するばかり。おまけに保安官の妻まで行動がおかしくなる。手の内を見せつつ、クライマックスで両者を交錯させるという段取りである。

明示的に言及されてはいないが、「インスマスを覆う影」や「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」などH.P.ラヴクラフトを強く暗示する。ショックシーンやゴア表現もふんだんに盛り込み(目に注射はイタイ!)ながら、そのくせ怪奇趣味も感じる作品に仕上がっており、なかなか好みのタイプである。クライマックスの映写シーンなども洒落ている。しかし、ゾンビ化する目的がガバガバなのは大笑いである。「ゾンビは病気にならない」って…腐るやろがい。

※小中千昭が脚本を手掛け、佐野史郎が主演したテレビ映画「インスマスを覆う影」(1992)が本作のフレームをほぼそのまま借用している

※邦題は、「サスペリア」(1977)の成功に気をよくした東宝東和が「サンゲリア」(1979)を世に送り出し、さらに日本ヘラルドがあやかって「ゾンゲリア」とした由
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