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海をみるの堊のレビュー・感想・評価

海をみる(1996年製作の映画)
3.0
家の庭にテントを張らせてほしいというヒッチハイクの女タチアナと一向に泣き止もうとしない赤ん坊を抱えた母親サーシャとの不穏な52分。「そんな旅を捨てて惜しくはない?ご亭主と赤ん坊に縛られて。今の生活で幸せ?」「幸せ」。父、または夫の不在がテーマになりがちなフランソワ・オゾン作品でこうした「生殖」をめぐる女性同士の感情のぶつかりが描かれるのは当然であろう。執拗に繰り返されるフレーム内フレーム、縫い合わされた膣、朽ちた墓…精神分析的な批評を誘う細部も興味深いが、波音だけが響く深夜、眠りについた親子をタチアナが静かに眺めるシーンには恐怖以上に素直に胸を打たれる。ドヤ顔で作っていそうで腹立つが。会陰切開にまつわる会話でぶち上がったので+3点。
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