Jeffrey

海をみるのJeffreyのレビュー・感想・評価

海をみる(1996年製作の映画)
3.5
‪「海をみる」‬

‪冒頭、大西洋の小島。
出張中の夫との連絡が途絶える、海辺の島、赤子、訪ねてきた女、サーシャの話、テント、朝、バスルーム、林にて、タチアナのノート、夕食、船出。今、カラフルな映像と共に緊張感溢れるインモラルなノワールが我々を直撃する…

本作は1997年にフランソワ・オゾンが監督と脚本を務めた作品で、このDVDには短編集の「サマードレス」と「ベッドタイム・ストーリーズ」が収録されている。

この映画も冒頭から個人的には好きな入り方をする。

赤子の泣き声でベッドで目覚める母。抱きかかえ美しい風景が見える外へ出る。哺乳瓶で与え、寝かせる。続いて夫との連絡が取れないので心配して関係者に電話連絡をする。

次のショットで自転車に乗る男の描写、人気のない静かな浜辺に親子は海水浴を楽しむ。

波の音、砂遊び、読書、昼寝…続いて広い庭の家に戻り赤子をお風呂に入れる。

そこへバックパッカーの女がキャンプ場がいっぱいだったので、庭にテントをはらしてくれと懇願し、それを許す。

続いて彼女を食事に誘い家の中へ入れる。たわいもない世間話が始まる。

本作は退屈な日々を過ごしている人が突然、見知らぬ人がやってきても話し相手として警戒を緩め、自宅へ案内してしまう恐ろしさ等を映しているようにも見える。

食事時の会話が終わり、女はテントへ戻り、母は椅子で自らの陰部をマッサージする。

物語は翌朝に…朝食を作り晴れた天気の良い外へ料理を持っていく。

ボンジュールとテント越しに挨拶しても返事がなく、開けてみると女の姿はいない。次の瞬間スーパーマーケットの描写へ。

仕方なく赤子と一緒に朝食をとっている最中に女が帰宅する。浴室を借りて彼女は風呂に入り、タバコを吸いとある嫌がらせをする。

それはあまりにも品性の無いものなのでここでは伝えられない。

そして物語は旦那が帰宅して壮絶な結末を迎える。

これは正に悪夢のような話である…僅か上映時間58分の中に収めた衝撃作である、と詳しく話すとこんな感じで、中々強烈なインパクトがある。母親役のサーシャ・ヘイルズの日に焼けた小麦肌とサングラスをかけ、どこかしらボーイッシュな感じのバックパッカーの女を演じたマリナ・ド・バの妙な関係性が面白い。

紺碧の海をバックにロングショットでうつされる映像美は心に残るし、逆光を使った木々の描写や男性が男性のアソコにしゃぶる画は不意にあり、驚かされる。

また、その森で見知らぬ男と母が性行為をする場面もシュールだ。

映画全体的に自然音が強調され物静かな作風だ。

いやさぁこの赤ちゃんがさ、まぁよく泣くこと泣く事。これ見るだけで母親は大変だなと思う。そこで余談なのだが、この赤子はヘイルズ自身の赤ん坊らしく親子で出演したそうだ。

この曖昧さと言う要素をふんだんに使った本作をまだ見てない人はお勧めする。

正に「海を見た」のタイトルが合う映画だ。

さて、短編集の感想にも言及しておこう。

サマードレスの方は冒頭から裸の男を映して、もう1人の裸の男がラジカセを流し踊る。

どうやら口喧嘩をしている様だがバカンスを楽しんでいるようだ。1人の男性は踊ってばっかの男に呆れて1人で自転車に乗り海へと向かう。

そこで全裸になって泳ぎ砂浜で横たわり眠る。そこに人影が見える。話しをかけてきたのはカラフルなドレスを見にまとった女性。

2人は年齢を聞き合い18歳だと判明する。男女は森の中に行き、女性はそこで裸になり、2人は愛し合い始める…そして浜辺に戻ると男性の荷物が盗まれている。男女はそこで一旦別れ、ゲイの相方がいる場所へ戻る男性は…と単純に話すとこんな感じで、たかが15分の映画なのにものすごく見ごたえがあり、正に大傑作といっても過言ではない。

これがいかに短編の王者オゾンと言われた理由がわかる。

短編もそうだが、中編も限られた時間内でここまで作り上げるのは凄いし、野心的な部分を感じ取れる。

この厳格なスタイルの一環が彼の見所で評価できる点であろう。特にシェイラの"Bang Bdng"の曲が良い。

続いて「ベッドタイムストーリーズ」はオムニバス形式になっており、様々な男女の事情を兼ね備えてベッドの上で語られる室内ショットで構成された設定で、26分間と言う尺の中に収めた関係性を映し出す。

特に最終話の"2人の童貞"が個人的に面白かった。

監督自体がゲイであることを公表している分、やはり同性愛を描いた作品が多く見られる。

‬ ‪独特のブラックユーモアが良い…。‬
Jeffrey

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