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台北に舞う雪のkyのレビュー・感想・評価

台北に舞う雪(2009年製作の映画)
4.0
ストーリー性やテーマは薄いかもしれません。しかし町並みをはじめとする演出やチープ加減が妙に情緒的な雰囲気を醸すのです。自分はこういう映画が特に好きなようです。だから台湾や香港の映画に惹かれるのかな。また台湾にも行きたくなりました。

台湾北部の小さな田舎町チントンてわ孤児として育ったモウ。彼は街中の人々の困り事を請け負って生活しながら、彼が幼い頃に姿を消した母を待ち続けている。

台北では降るはずのない雪。帰るはずのない母。そんな2つを重ねているのかな。と連想して鑑賞し始めました。内容は他のことがメインでしたが、うまく繋がっていて良かったです。

前にも絡めましたが、愛がなんだ。や南瓜とマヨネーズ的な映画は台湾映画にインスパイアされているのかな。ストーリー性や何気無さそうな日常を描いている作品は。今作の日本バージョン的な位置付けを感じたりします。

台湾人とかアジア系の綺麗な女性の煙草姿がいいんですよね。人にもよりますが、煙草の煙に巻かれた彼女の機微というも言えるような表情がどことなく切なくて哀愁を感じます。

王家衛の作品は殆ど観ましたが、どれもこれも素敵でお気に入りの作品達です。台北ということで今作も彼の作品と類似する点がちらほら。色彩なんかはやはり街並みが似ているだけあって共通点がありました。

チープでギラギラのネオンが台湾らしくて良いです。ストーリー性やテーマなんかは少し薄いかもしれませんが、そこに自分で考えて付け加えて創造しながら見る。こんな映画も偶には良いのかもしれません。チープさが妙に感傷的で情緒的な気持ちにさせてくれます。

この手の映画は途中でさりげなく、なんだか情緒的で素敵なメロディが流れてくるのも注目。

心優しく利他主義的なモウなのに、恋愛や金に対する欲に眩んだ人々はモウから離れていく。悲しいけどそれが現実でもある。モウの中にある、自分が愛する人に傷つけられることは何もない。という趣旨は優しも弱さも強さもが共存している。人間らしい人間なのかもしれません。

悲しみの雨、水。そこに垣間見れるモウの原点ともいえる重要な人物の姿。雪がテーマなのにこうな風に魅せるとは。
ラストのランタンも良すぎる。淡い空に浮かぶ無数のランタン。沢山のランタンを映すってことは今作の登場人物それぞれの想いやそれに伴う葛藤が淡さで表現されていたのかな。
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