明石です

嘆きのテレーズの明石ですのレビュー・感想・評価

嘆きのテレーズ(1952年製作の映画)
4.5
映画のような甘いロマンスに憧れながらも、脚の不自由な夫と小うるさい姑に縛られた結婚生活。そこから抜け出すべく恋仲になった男と組んで●●を殺害してしまう女性の話。前半は砂糖菓子のように甘いラブロマンス、後半は急展開のサスペンスと作風が一変するのが面白い。ジャケットの雰囲気からロマンチックな話を期待してなかったので、少々面食らったけどね笑。

主演はフランス版ローレン・バコールてな雰囲気のシモーヌ・シニョレ。『悪魔のような女』で演じた凛とした一本気な大人美女の雰囲気とは少し違う、世俗のことわりに葛藤する彼女の姿が私には新鮮でした。イタリア出身の魅惑の二枚目伊達男に恋しているのか、それとも恋する自分自身に恋しているのか。いずれにせよこんな棺桶に片足突っ込んだような鬱屈した数年間を過ごしてたら、そりゃ抜け出したくなるよなと同情してしまう。しかも夫が義理で結婚した従兄弟ときたら。

ラストのスピード感は圧巻でした。目新しいかと言えばそんなことはなく、よくあると言えばよくある展開なのだけど、見せ方とてつもなく上手い。なんだかんだ絵に描いたような悪人が1人もいない中、ここまで見事な愛憎劇を描いて見せた作り手の手腕に拍手ですね。

——好きな台詞
「映画なんておよし。キスシーンなら街頭でも見れるわ」
明石です

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