にゃもす

花のようなエレのにゃもすのネタバレレビュー・内容・結末

花のようなエレ(1971年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

耳が聞こえず、知的障害のあるエレを村の男たちは慰みものにしていた。女神と言いながら蔑み笑う場面はおぞましいが、現代でも形を変えながらこのような状態はあると思う。

本来守るべき存在であるエレが蔑まれながら搾取されている事は悲しいが、その悲しみや痛みを本人が理解出来ていない。感じてはいるが、それが何なのかを分かっていない。

主人公のファブリスはそんなエレを純真だと思い惹かれるが、結局は村の男と同じように衝動をぶつけた。行き場のない悲しい物語だと思う。

戦争から帰ってきたファブリスの兄は、恐らくPTSDの症状に耐えられなくなり自殺したのかも知れない。エレに「彼女は幸せだ」と言っていたのは、痛みが何なのかというのが分からなくなれば、フラッシュバックによる痛みも感じなくなくなるだろうという願いのように感じた。
酒で紛らわしても耐えられない痛みを感じた時、いっその事人間をやめて楽になりたいと願ったのかも知れない。

類似するテーマの映画で、今村昌平の「神々の深き欲望」がある。あちらは約3時間の映画で、とにかくエネルギッシュで一週間ぐらいあの映画について思ってしまったが、この映画もなかなか心に残る。
「花のようなエレ」は重いテーマのように思うが、それを軽やかに爽やかな愛という幻想も交えて描いている。
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