ちろる

ガッジョ・ディーロのちろるのレビュー・感想・評価

ガッジョ・ディーロ(1997年製作の映画)
4.0
悲しいことがあったらお酒を飲んで歌って忘れ
楽しいことがあったらお酒を飲んで踊って笑う
まるで生きることとは音楽だと言わんばかりに
ロマのおおらかな生き様を、パリからやってきた青年の目線を通して描いた物語。

ストーリーとしてはあってないようなものなのかもしれないけど、ずっとずっと人間らしい彼らの世界に酔いしれたいと思える素晴らしい人間賛歌。
エミール・クストリッツァ監督みたいな世界観が好きな人なんかにはぜひおすすめしたい作品です。

ちなみにトニー・ガトリフ監督自身が実際にロマの血を引くとだけあり、徹底的にリアリティを追求した本作は、実際のロマの村でロマたちがロマ語を話しながら彼らの風習やカルチャーを映画の中で余す所なく見せていく。
まるで、私もこの主人公のステファンとともにこのわけわからぬ愉快なワンダーランドに迷い込んでしまった気分。
日本の昔話の浦島太郎が竜宮城で時を忘れてしまう気分ってこんな感じなんだろうか?
スケベなアル中イジドールじいさんと、自由奔放で美しく激しいサビーナをはじめ、ステファンを取り巻く彼らの陽気さが愛おしくて仕方ない。
さっきまでめちゃくちゃ怒ってたのに数分後には笑ってるし、さっきまでものすごか泣いてても踊っている。
あぁ人生短し、こんな風に生きられたらどんなにいいだろうかと彼らの笑顔に勇気づけられるのです。

劇中流れるエキゾチックなロマの音楽はどれも美しいですが特にサビーナを演じたローナ・ハートナーの魅力的な歌声は、この作品の価値をより重厚感のあるものにしてくれたのは間違いない。

この監督だからこそ作りだせたロマの人々への尊敬と愛がこもったこの作品に、辛いこんな時期だからこそぜひたくさんの人に触れてほしいです。
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