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嗚呼!! 花の応援団のshishiraizouのレビュー・感想・評価

嗚呼!! 花の応援団(1976年製作の映画)
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プレ・ビーバップだとすると、こちらは微塵も羨ましいところのない理不尽な応援団の青春。ドタバタと抗争が続くが、変人の青田赤道いがい、からきし弱い面々の右往左往が可笑しくもかわいらしい。団旗もピンク色でなんかかわいい。だらしないけど憎めない映画。
脚本は田中陽造。サブプロットの女の話、赤道の初恋相手の新子(宮下順子)。大樹を新子に見立てて自慰すると彼女の和装の足にドピュ。自分を好きなんだと知った新子が赤道と草むらに沈むロングショット。上品かつ下品。
もうひとりキーになる女、一回生たちが行きがかり上助ける水原ゆう紀演じるマブい女・初江(ビニールのテーブルクロスみたいな変な服)、彼女は客をとるしかない身の上で、学生たちにはどうすることも出来ない。よくあるエピソードだが、映画のラストに二階で客に抱かれる初江を路上から応援しつづける富山たち一回生の悲痛なエールのエモーション。ここで女のかなしみを鮮烈に刻んだ水原ゆう紀は、のちに曽根『天使のはらわた 赤い教室』(79)の名美役で映画史に残る存在となる。
青田赤道。マンガ通りの「クエックエッ」「~ねんのねん」などの言葉をリアルの水準などべつに気にせず自然に口にする、K-1の城戸みたいな顔の今井均(第1作限り)の台詞まわしの魅力。噛みつき攻撃のカリリという妙な効果音。

〈青田赤道〉という字面と響きは、のちの『SLAM DUNK』(不良、ギャグ、部活)の〈桜木花道〉、『Theかぼちゃワイン』(応援団、ラブコメ)の〈青葉春助〉に残響として痕跡を残す


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既にロマンポルノ体制に移行していた日活に、本作を監督する曽根の要請で高瀬将敏は帰還する。父のサポートにと高瀬将嗣はエキストラ集めや出演、現代学ランの監修等としてコミットする。将嗣は父がキャメラ前のアクションをつける際、ロングの部分の技斗などを手伝った。のちにビーバップやあぶ刑事などで日本映画のアクション史に名を刻む高瀬将嗣のキャリアのはじまりだった。

日活撮影所で行われた一般公募のオーディションが話題となり、テレビでも取り上げられることに。
〈中ランに金茶のボンタン、白足袋に雪駄でヒゲをたくわえた()圧倒的な存在感でオーディションに優勝した〉のが今井均。既に新卒会社員として企業に入社していたため、特別有給扱いで一作限りの出演が実現した。
北口役の深見博(のちの深見亮介)はこれでデビューし以後俳優となる。
二回生の小林役でシリーズ通して印象を残す野崎英則は流通大学の学生。本間進は拓大の拓人会会長

曽根「これは映画の撮影じゃなくて実際の部活動だと思え!()すべて押忍!いいな!」
「押忍!」
「押忍!」

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公開初日。ホテルで缶詰になっている田中陽造のもとに三浦朗が興奮とともにやってくる。「コヤに入りきらないんだ。入れない連中が行列してる。ぐるっとコヤを取り巻いてるんだ。」〈ヒットした喜びをまず脚本家に知らせにきてくれた。三浦朗が、そういうプロデューサーであったことに、驚いていた。嬉しかった。〉(田中)

大ヒットを受けて、曽根中生は撮影所をふんぞり返って闊歩していたという
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