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昨日・今日・明日のsowhatのネタバレレビュー・内容・結末

昨日・今日・明日(1963年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【少子化の理由はこの映画を観れば分かる!】

ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが主役の楽しいオムニバス映画です。

「ナポリのアデリーナ」(勝手なサブタイトル:【貧乏・人情・子だくさん】)

マルチェロ・マストロヤンニは無職で甲斐性なしのマザコン男、ソフィア・ローレンは肝っ玉母さんに扮します。ソフィア・ローレンが口は悪いが情に厚い、たくましいイタリア庶民を熱演!でも本当の主役は「街の人たち」。困ったときはお互い様とばかりに、貧乏夫婦に手を差し伸べまくります。そのせいで官僚も警官も翻弄されまくります。戦後イタリアの民衆とコミュニティのパワーを切り取った映画です。

「ミラノのアンナ」(勝手なサブタイトル:【リッチ・欲望・孤独】)

ソフィア・ローレンはロールス・ロイスを駆る大金持ちの若奥様、マルチェロ・マストロヤンニは奥様の浮気相手、しょぼいフィアットに乗る貧乏作家に扮します。「あと数日で美しい10月も終わりね…」会話はいちいちおしゃれですが、中身がありません。自分でも「私の心は空っぽ…」と奥様はおっしゃいます。奥様にとっては若い浮気相手はただのオモチャであり、都合が悪くなるとポイ捨てしてしまいます。奥様の、何不自由ないリッチな生活の裏の、空虚な孤独が透けて見えます。古い車が好きな方にも楽しめる映画です。

先進国で少子化が進むのは、「アデリーナ」がいなくなりみんな「アンナ」ばかりになってしまったからではないでしょうか。資本主義と都市化の行き着く先、当然の帰結として、少子化はもはや解決の術はないのかも…。

「ローマのマーラ」(勝手なサブタイトル:【ポップ・優しさ・信心】)

ソフィア・ローレンはセクシーな娼婦、マルチェロ・マストロヤンニは育ちの良いお坊ちゃんの上客に扮します。舞台となる彼女のアパートがなにしろポップ。二人のコスチュームがなにしろおしゃれ。2024年の今から見てもまったく古臭さを感じません。さすがイタリア!隣人の老夫婦のところに遊びに来ていた孫の真面目っ子神学生がソフィア・ローレンに一目惚れ。神を捨て女に走ろうとする孫となんとかそれを思いとどまらせようとする老夫婦。その騒動に巻き込まれる哀れなマルチェロ・マストロヤンニがなにしろキュート。ソフィア・ローレンは娼婦ではありますが、男に媚を売らず、プライドを持ち、しかも信心深い女性です。彼が彼女にメロメロなのは、素っ気ない素顔の裏に隠された彼女の優しさを知っているから。彼女の何気ない一言にウキウキしたりションボリしたり、マルチェロ・マストロヤンニのコミカルで情けない演技が秀逸です。

【本作の監督ビットリオ・デ・シーカ、プロデューサーのカルロ・ポンティ、主演俳優の4人の簡単な関係をまとめてみました】

1943(S18) イタリア降伏
1948(S23) ソフィア・ローレン(14)がミスコンで映画プロデューサーのカルロ・ ポンティ(36)に見出される
1949(S24) ビットリオ・デ・シーカ(48)、「自転車泥棒」を監督
1954(S29) カルロ・ポンティ(42)、「道」を制作
1964(S39)   本作公開、ソフィア・ローレン(30)、マルチェロ・マストロヤンニ(40)
1966(S41) カルロ・ポンティ(54)とソフィア・ローレン(32)が結婚
1970(S45) 「ひまわり」公開
1974(S49) ビットリオ・デ・シーカ監督(73)フランスで死去


男性3人がみんなイタリア国外で亡くなっているのは、離婚に厳しいカトリック社会から逃げ出したかったからでしょうか…。
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