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ある日どこかでのYYamadaのレビュー・感想・評価

ある日どこかで(1980年製作の映画)
4.4
【タイム・パラドックス佳作選】

◆パラドックス発生の方法
〈タイム・スリップ〉
 →タイムスリップを希望する時代の服飾を身に付け、自己暗示を行う。

〈見処〉
①「Tear-Jerker」作品の最高峰
・『ある日どこかで』(原題:Somewhere in Time)は、1980年に製作されたSF・ラブストーリー。
・本作の舞台は1972年、脚本家志望のリチャード・コリアー(クリストファー・リーブ)の処女作上演後のパーティー会場。成功を喜ぶ彼のもとに上品な老女が歩み寄り「私のもとへ帰ってきて」という言葉と共に懐中時計を手渡し去っていった。
・8年後の1980年、脚本家となったリチャードは仕事に行き詰まり、勝手気儘なドライブの旅に出発。途中で通りかかった「グランド・ホテル」に、引き寄せられたかのように宿泊する。ホテル内に設置された歴史資料室を見学すると、そこには若く美しい女性の写真が掛かっていた。ホテルの老ボーイのアーサーに尋ねると、彼女は1912年にホテル内の劇場で公演をした女優であることを知る…。
・本作は、スピルバーグのデビュー作品
『激突!』(1971)の脚本家、リチャード・マシスンの最高傑作と称されるSF小説「Bid Time Return」(1975)を原作としている。ある劇場に飾られていた往年の人気女優の写真の美しさに衝撃を受けたというマシスンの実体験に基づいている。
・本作は2人の登場人物、リチャードとエリーズの儚いラブストーリーに対し、「Tear-Jerker」(お涙頂戴もの)ドラマの最高峰として、現在もカルト人気を誇る古典作品。ロケ地となったミシガン州、ヒューロン湖、マキノー島に実在する「グランドホテル」は、1887年に開業されたリゾート、現在も本作ファンの聖地になっている。

②低予算ゆえの苦難
・本作のプロデューサーを務めたスティーヴン・サイモンは、1977年の「世界幻想文学大賞」を受賞した原作小説を気に入り、原作者マシソンと面識のある(スピルバーグと同期で『ジョーズ2』を手掛けた)監督のヤノット・シュワルツに映画化の話を持ちかけた。
・シュワルツは、シェイクスピアの一節を引用した原題「Bid Time Return」よりも、観客受けが期待出来る「Somewhere in Time」に改題し、ユニバーサルに映画化を提案も、ヒットを期待出来ないと判断したユニバーサルは、映画化を認める代わりに、予算半減となる製作費500万ドルを提示。
・この予算の少なさが足かせになりながら、結果的に高い熱意のスタッフを集まることが出来たが、そのなかで2人のキーマンの参加により、長く愛される作品の映画化に繋がり、2人の代表作ともなった。
・1人目は『スーパーマン』(1978)にて、ブレイクしたばかりのクリストファー・リーブ。本作の低額ギャラに失笑したリーブであったが、宿泊先に直接出向かれたプロデューサーから受け取った脚本に感銘を受け、出演を承諾。
・2人目は「007シリーズ」のテーマ曲を手掛けた作曲家のジョン・バリー。本作の予算規模ではバリーにオファーさえ出せないのが通例のなか、本作のヒロイン、ジェーン・シーモアが旧知のバリー直接ストーリーを説明。彼女の熱意を受けて「言い値」にて参加することになった。
・完成後のプロモーションにおいても、配給のユニバーサルは、販促費用を同時期公開の『ブルースブラザーズ』に投入。本作は最終的に全米で970万ドルの興収に終わり、興行面では成功を果たせなかった。

③公開後の人気の高まり
・不振に終わった興行終了後、ケーブルテレビなどで次第に支持を集めるようになる。1990年には熱烈なファンであった映画プロデューサーのビル・シェパードが呼びかけによりファンクラブ、NSITE(The International Network of Somewhere In Time Enthusiasts)が設立。現在も公式ホームページを運用され、コロナ禍の2020年も含め、毎年「グランド・ホテル」にてコンベンションを開催している。
・日本においても、1995年に宝塚歌劇団が、1995年に天海祐希(リチャード)、麻乃佳世(エリーズ)の主演によりミュージカル化。2010年に映画演劇文化協会主催「午前十時の映画祭/何度見てもすごい50本」にも選ばれている。

④結び…本作の見処は?
自身のオールタイムベスト作品の一つ。いつの日か「グランドホテル」を訪ねてみたい。

◎: 40年以上前の作品であるが、いま見ても色褪せない名作。本作の 登場人物、リチャードとエリーズの2人が実在しているような錯覚を覚えほど、愛おしさを感じてしまう。
○: 本作に登場する、ジョン・バリーによる劇中曲とラフマニノフの「狂詩曲」。本作の場面が思い浮かぶほど、感傷的な楽曲が素晴らしい。
○: 劇中に撮影場面が登場するエリーズの写真が非常に印象的である。リチャード役の
クリストファー・リーブが実際の撮影時に振り返ってみた時が、本当に初めて見たため瞬間にて、情感のこもった演技となったそうだ。
▲: タイム・スリップの手段はどうかと思う。
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