海

しあわせの海のレビュー・感想・評価

しあわせ(1998年製作の映画)
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あなたの匂いが、美しいところへ行くための唯一の切符みたいだから、いつまでも手放せないままで生きてしまう。あなたを抱きしめるたびに、いつかあなたを抱きしめた記憶がこぼれていく。まるでそう、海辺を歩いたあとで、折り返した裾の中に、いつのまにか入り込んでる砂みたいに。波にさらわれたカセットテープ、朝の6時、墜落した飛行機、喧嘩のラブソング、ことばひとつ、呼吸や眠りのたったひとつ。神さまは、愛するひとの、瞳の中に住んでる。偶然と必然の中で生きるあなたに、いったいどれだけのしあわせを、わたしは残してあげられるだろう。耳をすまして、よく聴いてごらん、これは途切れてしまった幸福や、終わってしまった人生の話じゃない、永遠に続いていく、あなたとわたしの物語よ。
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