すずす

ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポのすずすのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

戦後を緻密に再現した美装が魅力の映画ですが、太宰治の痴話話なので今見ると、辛いものがあります。

太宰治はヒットはしないが、しばしば映画化される不思議な作家。この映画も不発でしたが、2009年キネマ旬報、邦画・第2位と評価が高い映画です。

太宰の化身の様な作家を演じるのが浅野忠信ですが、本作の特長は主人公がその妻(松たか子)な事。この健気な妻を魅力的に描いています。ウブな妻夫木扮する職工が惚れ、成功した弁護士の堤真一が惚れ、にも関わらず、不埒な夫に対して、ギリギリまで貞節を尽くす。しかし…そんな女、
私には気持ち悪く思えてなりません!私の目には不気味にしか映りません。
太宰原作にしては女性目線の変化球な作り方なのですが、女性の描き方は男の望む理想の女に過ぎません。

但し、演出や芝居は手堅く、特に、美術や衣装はディテールまでしっかり作り込まれています。特に、中央線の電車、ヤンキーやパンパンが屯する銀座の通りも見事です。

太宰治の短編の映画化ですが、原作は未読。『ヴィヨンの妻』を基に『桜桃』などを加筆している様な気がします。

蜷川実花監督の太宰『人間失格』の方が、より美装を派手に使ったファンタジー色が濃く、私はそっちの方が好みです。

太宰という人、今なら、さながら過激なyoutuber的な存在にも思えます。色男故の女性との過激な顛末こそが切り取られ、文才はあれども、今なら社会的に抹殺されるのかなぁ!?
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