Yutaka

トリコロール/赤の愛のYutakaのネタバレレビュー・内容・結末

トリコロール/赤の愛(1994年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

映画としては白の愛の方が好きだけど、これはキェシロフスキの映画技巧が爆発してて圧倒された。
少し変わった群像劇のようなスタイルで、電話を通してシームレスに紡がれる私と他人の人生。それが最終的に交差して、その交差の運命性、願望を伴った夢想とも想像出来るファンタジーなラストには舌を巻いた。
おじさんと若い女性という事で、ちょっと不安になったけど、嫌な方向には全く進まない。確かにそこには愛があったし、これが全て彼の妄想だったとしても、彼が彼なりに愛に救われている。ヴァランティーヌは愛に枯渇した世の中の全ての男性が、自分の人生に現れて欲しい理想の女性として妄想し自らの心を救済するような人物像。
もし、このトリコロール三部作が全て元判事、ジョゼフの妄想だとすると、青で女性に自由を与え、白で女性を突き放して平等を突き付け、この赤では全てを包む博愛を受け入れた。過去に女性に裏切られた彼が、愛の可能性をようやく肯定出来たのかもしれない。
このナラティブの凄さもあるけど、この群像劇を実現させたカメラワーク、伏線的なショットの数々はもう完璧。ショットの美しさは今作が1番。とにかく赤い。ジュリエット・ビノシュとジュリー・デルピーと違った今作のヒロイン、イレーヌ・ジャコブは元々知らなかったけど、綺麗すぎてびっくりした。キャスティングもそれぞれが見劣りしない完璧さ。そりゃこの三部作撮ったらもう映画撮らなくていいやってなるか。
Yutaka

Yutaka