佐藤克巳

淑女と髭の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

淑女と髭(1931年製作の映画)
4.5
現存しないフィルムで傑作の誉の高い「お嬢さん」のソフィスティケイテッドコメディを更にナンセンス度を加えた、北村小松脚本、小津安二郎監督、岡田時彦トリオの傑作サイレント映画。学生剣道大会祝勝で男爵家子息で親友月田一郎に誘われたパーティに出向く途中、伊達里子等不良グループにゆすられるタイピスト川崎弘子を助け意気揚々の硬派の髭剣道選手岡田時彦。月田の妹飯塚敏子に愛想を尽かされる、むさ苦しい髭と家令坂本武とのおかしなダンス。面接に失敗する岡田に川崎からのアドバイスで髭を剃るとホテル採用が決まり、川崎宅へ御礼に伺って裸足姿を隠すはみ出たパッチで靴下擬装。一方川崎も見合い話の最中にコップを口に吸い込む悪戯等のギャグが次々に。ある日、ホテルで窃盗の伊達を部屋で説教して疲れて寝た岡田、翌日訪ねた川崎は構わず服の破れを直す。川崎が「私には確信がある」と言うと、納得の伊達は去る。見所は、本来結核持ちの痩せた岡田が、豪放磊落の三枚目創りの仕上がりが、三船敏郎を彷彿とさせる見事さに驚く。
佐藤克巳

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