りえぞう

道のりえぞうのレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
4.0
純真な心を持つ娘ジェルソミーナは、旅芸人で荒くれ者の男ザンパノに売られ、助手として道具のように扱われる日々。それでも彼に尽くそうとする、切なすぎるお話。

あらすじを見るとジェルソミーナは白痴で、頭が少し弱いと紹介されているが、そんな風には思えない。純粋で心優しい彼女の周りにはいつも子供たちが集まり、皆を笑顔にする不思議な雰囲気を持つ女の子。天使のような笑顔の持ち主で、時に明るく時に悲しく、込み上げてくる感情のままに、あるいは自分の気持ちをかき消すかのようにコロコロと変わる表情が印象的。
自分の存在価値がわからなくなったジェルソミーナに、綱渡り芸人が「この世の中にあるものは何かの役に立つんだ。こんな小石でも何か役に立ってる。」と言って聞かせるシーンはやはり名シーン。
流れるメロディーは哀しくも美しい。

ある事件をきっかけに、大切な小石を手放してしまったザンパノ。一人では生きていけない彼女を置き去りにする選択には憤りを感じたし、別れ際、眠る彼女の枕元にトランペットを残し、最後まで素直に優しさを表現できなかった彼がもどかしくも感じた。

大切なものはずっと自分のそばにあったんだ、足元に存在する小石のように。
ザンパノは尊いものを奪い、そして失ってしまった。
海辺での彼の表情がなんとも言えないラストでした。
りえぞう

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