QTaka

道のQTakaのレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
2.5
『フェリーニに恋して (2016) IN SEARCH OF FELLINI 』を見て、その復習としていくつかのF.フェリーニ作品を見る事にした。
.
『フェリーニに恋して』の劇中では、主人公が出会った『フェリーニ映画祭』で上映されていた他、代表的なシーンが劇中に何度もインサートされている。
ということで、フェリーニ作品からまず、この一本。
ストーリーと言い、登場人物と言い、まぁあまり楽しい映画では無い。
生きる事で精いっぱいの女が、ただただ乱暴で粗野な男と一緒に旅をするロードムービーなのだから。と言ってしまうとどうしようもないのだが。
でも、この貧困と絶望の救いの無い状況の中に人が生きているその姿を延々見せられていると、そういうものだと思い始めてしまうのが怖い。
そんなに絶望ばかりでは無いはずなのだが。
希望の光として音楽が登場する。誰かが現れるというより、音楽が現れる。
フィドルの音は、女の心をつかみ、やがてその音色を手に入れる。
トランペットでその音色を吹けるようになった彼女は誇らしげに吹き鳴らす。
何もできなかった女が、何もできないと思っていた女が、誇らしげに奏でるその調べが、彼女が変わった事を示しているように思う。
乱暴で粗野な男は、自らに対しても同様に無知であり、自分が、どこで、誰と、どうやって生きているのかを理解していなかった。
女とともに過ごした日々が後になってどういう時間であったのかわかったのかもしれない。
それは、既に遅すぎる事だったのだけれども。
.
女にフィドルの音色を聞かせた男は、彼女に大切な事を教えた。
「誰だって必ず誰かの役に立っている。」
「この石ころだって、きっと何かの役に立っている。俺にはわからないけどね。」
そして、あの音色を教えてくれた。
その調べは、女に自らが生きる事の意味であり、その勇気を与えてもらった音色だったのだろうと思う。
QTaka

QTaka