ツクヨミ

東京の女のツクヨミのネタバレレビュー・内容・結末

東京の女(1933年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

マッチカット編集の実験感と衝撃的なラストにショックする小津中編。
小津安二郎監督作品。サイレント時代の小津作品の中でも一時間以下でわりかし見やすそうだなーと本作をチョイスしてみた。
まずオープニング、ちゃぶ台の上にある小道具を映したショットから始まりカメラが移動したと思ったらさっきのちゃぶ台を背景にまた小道具にフォーカスした構図美を形成する。もう初っ端小津らしさ全開でニコニコになるし、そこからは移動撮影なく固定ショット+マルチショットで見せるいつもの小津に安心させられる仕様だ。
そして本編は、オープニングの姉弟の関係性から姉がいかがわしい仕事をしているんじゃないかという疑惑を別の家庭から掘り下げていく。最初はそれを探る家庭が何者なのかはわからないんだが、大学生の弟がその家庭の娘とデートしているシークエンスで二つの家庭を繋ぐようになっている。まあけっこう穴がある立ち上がりでなんか面白くないなーなんて思っていたんだが、中盤で疑惑を抱いた娘が弟に切り出す会話シークエンスがまあエモーショナルに心を抉っていく。信じたくないが疑惑を切り出す娘と疑惑を信じたくない弟の会話には付き合っているという関係性にヒビが入るという裏が見えてきて辛いし、そこから弟が姉に疑惑を切り出すシークエンスが更に辛すぎる。白状しあなたのためにお金を稼いでいるんだよと言う姉と、いかがわしい仕事をしている姉を許せない弟のぶつかり合いというか喧嘩なんだが、そこにいつもの小津的な"家庭の危機"が見えるしいつも小津は家族ドラマを通して観るもの心を抉ってくるのだなと改めて関心してしまった。
また後半の唐突な弟の自殺にはびっくり仰天、家族のための売春という"風の中の雌鶏"に繋がる話であるが展開の衝撃度は小津作品でもトップクラス。胸糞要素すらあるんだが、姉弟の関係から話を切り出した田中絹代の後悔の念が爆発する涙にはこちらまで泣きそうになってしまう。何という辛すぎるラストだろうか、そして報道の風刺みたいな珍しい終わり方まで目から鱗である。
そして今作のカッティングがマジで小津作品の中でも特殊で、吹きこぼれそうなやかん→手洗い場という水のビジュアルマッチカット.壁掛け時計→壁掛け時計のビジュアルマッチカットなどなどマッチカットの応酬に大歓喜、個人的にマッチカットが好きすぎるので多様なマッチカットを使いまくる実験感にワクワクした。あと"一人息子"と同じく大胆なアメリカ映画のサンプリングが今作でも見れる、今回は"百万圓貰えたら"というオムニバス作品らしいね。小津ってわりかしサンプリング大好きなのか?
ツクヨミ

ツクヨミ