継

県警対組織暴力の継のレビュー・感想・評価

県警対組織暴力(1975年製作の映画)
4.5
久能(菅原文太)・広谷(松方弘樹)の主演2人の名は『仁義なき戦い』の主役・広能に由来し, 監督(深作欣二)と脚本(笠原和夫)も同シリーズと同じ。(以降, ネタバレを含みつつ役名と敬称は省略しますm(_ _)m)

『仁義〜』との違いは, ヤクザじゃなく警察側に軸足を置いてるトコで素っ気ないタイトルは表向きそれを表してはいるものの,
地元ヤクザとズブズブに癒着してる市警も「組織暴力」の側で,
タイトルからして “正義” の側に思えがちな県警も, 実は不正な用地買収を目論む企業と悪徳市議, 更にその子飼いのヤクザと繋がってて, 寧ろコッチの方が権力と繋がってる分タチが悪かったりする。

父と息子, 或いは兄弟のような菅原と松方, 警官とヤクザになって再会を果たす幼馴染みの同級生, 山城新伍と室田日出男のように, 本来なら敵対する側と固い絆で結ばれてる者がいるかと思うと,
同じ警官でも 敗戦後の辛酸を知る叩き上げのベテラン(菅原, 佐野浅夫etc‥)と戦後育ちの大学出のエリート(梅宮辰夫)という世代間の軋轢も存在して,
登場人物は属性や世代を超えてもつれ合う様に交錯し, 持ちつ持たれつ, 裏切り裏切られながら一筋縄にいかない相関を描いていきます。

フィクションとは言え脚本は実際の事件やエピソードを元に編まれて快調なテンポで進行。
暴力と腐敗と裏切りが基調‥って書くと息苦しいΣ(´∀`;)けど, エロと笑えるパートが絶妙に用意されていて, 何ていうか耐性のある方なら相当ダーティーなエンタメとして観る事も出来るし,
主要キャラはもちろん端役までその立ち具合いが物凄いんで各々の生き様を描いた群像劇としてもクオリティが高い。

例えばー,
イキがり, ヤラレっぷり, “唄い”っぷりが素晴らしいチンピラ, 川谷拓三、
ヒラ警官の鬱積を体現してぶん投げられる哀愁の古参, 佐野浅夫、
セクハラ,汚職とやりたい放題で最早コメディリリーフな金子信雄、
菅原との絆(劇画調回想の斜めアングルが雰囲気)とギラついた狂犬ぶりでストーリーを引っ張る 取り締まられ担当 “どーどー”松方、
棒読みっぽくも聴こえる標準語はキツい広島弁?が飛び交う中だからそう聴こえるのか?或いはこの方のキャラなのか? 分かんないけれど完全に浮いてて, でもそれが異分子としての存在感を際立たせ, 登場する中盤からストーリー共々邪魔者をぶん投げていく県警代表, 梅宮辰夫、
映画内で裏回し的にフューチャーされる, ライターを取り上げられる子チンピラ, 奈辺悟の物語 etc…,
個人的には意外な役柄で1シーンだけ登場する田中邦衛のしおらしさ(笑)で毎回笑ってしまいマス😹


結果として主要なキャストで死ぬのは「組織暴力」の側だけで, その撲滅(と,己の不正の証拠隠滅)に成功した県警側が何食わぬ顔で(用地を買収してやった企業へ)栄転してたりする明と暗, ドライで皮肉まじりなストーリー。
松方の組の着流し姿の親分はもはや影が薄く, 旧世代の,任侠精神の残滓みたいなものは唯一人菅原文太が背負う格好に。
そんな男が警官として許されぬ事を承知で罪を犯した2人を見逃してやる, その顛末と胸中の葛藤。
籠城シーンの結末で見せる, 裏切られた怒りと撃たねばならない哀しみが入り混じった表情が何とも印象的でした(^^)。
継