クロスケ

GONINのクロスケのネタバレレビュー・内容・結末

GONIN(1995年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

【再鑑賞】
才能ある若手や経験を積んできた中堅、円熟期を迎えたベテランが意欲的な作品を次々と発表し、かつての30年代や50年代の黄金期ほどではないにせよ、90年代の日本映画には活気があったように思います。

ちょうどその頃、中学生になり、積極的に映画を見始めるようになったばかりの私に「映画はおもしろい!」と確信させた作品のひとつが本作でした。

緊迫感みなぎるストーリー展開やスタイリッシュな映像や音楽に心躍らせ、夜と雨に異様なこだわりを見せる石井隆の作家性に映画監督とはアーティストでもあるのだと学ばせてもらいました。

『エリーゼのために』が流れる中、惨殺された家族の死体が横たわる部屋を亡霊のように歩き回る荻原の薄気味悪さ、木津が妻子と穏やかなひとときを過ごすレストランから唐突に人影が消えるシーンの冷たい不気味さなどは、そこらのホラー映画もビックリです。

豪華俳優陣の見事なキレっぷりも素晴らしい。駆け付けたパトカーに笑いながら発砲するビートたけし(片目に眼帯を貼っているのは、バイク事故の名残りだと記憶しています)。金属バットを振り回す、小太りメイクを施された竹中直人。激昂して拳銃を乱射する永島敏行。眉間に皺を寄せながら、恫喝してくる鶴見辰吾(彼は本作と『鮫肌男と桃尻女』の怪演によって、イメージチェンジを見事に成功させました)。殺された恋人の衣服や髪の毛を身に纏ってファイティングポーズをとる血まみれの椎名桔平。黒塗りの車から室田日出男がぬっと姿を現したときは、何だか妙に嬉しかったものです。

本作を含めたこの時期の作品は、私の映画鑑賞におけるレギュラーメンバーで、本棚にDVDが常にスタンバイされています。何度でも観たい映画です。

※余談ですが、この歳まで生きていると、幼少期や少年時代に親しんできた馴染みの名前が、近頃どんどん鬼籍に入られるのを耳にします。
本作の石井隆監督や根津甚八さん、室田日出男さんも既にこの世にはおられません。
仕方のないことだとは言え、寂しい限りですが、彼らの記憶を留めておくためにも、作品を観続けなければなりません。
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