える

スクール・オブ・ロックのえるのレビュー・感想・評価

スクール・オブ・ロック(2003年製作の映画)
3.9
たぶん20年ぶりぐらいに観た

観た当時は本当に劇中の10歳の子達と同じくらいの年齢で、子供達と同じ目線だった。なんか変な先生とみんなでがんばって大人に認められて楽しい映画だったなぁって感じだった。

今やデューイの方が近い年齢になり、このタイミングで観たら全然見方が変わった。人は大人になるにつれて自分に規律を課して、"まともな人間"であろうとしてしまう。そして子供達にも"まともな人間"であることを望んでしまう。ロックという題材はそれらをちょうどよく破壊する口実として最適だった。別にまともであることが必ずしも悪いわけじゃないんだけど、ずっとそうあり続けることはしんどいし、たまにそこから解放されることも大事である。

デューイは世間的に見れば知り合いの家に転がり込んで家賃も払わず居候を続けることに何の悪びれもないゴミクズ人間だが、それもある意味"まともな人間"を基準とした一側面でしかない。その証拠に、(最初は金のためだったとはいえ)子供達にそれぞれ才能を見出し、鼓舞し、励まし、自分で道を選ぶことを教え、最後には最高の舞台を子供達と作ることが目的に変わっていったのは、彼のロックへの愛が本物だったことに他ならない。適当に流行ってる曲パクりながらファンの女の子で生活と性欲を喰い繋いでいるカスミュージシャンとは全く違う。

個人的に、途中で何もかもバレ、せっかく完成間近のバンドを失う事件が起きたときと、ドラムの子が悪そうなバンドの兄ちゃん達に良くない遊びを教えられそうになっていたとき、デューイが腹の底から嫌っているであろう"まともな人間"の片鱗を見せたところがすごいリアルな人間っぽいなと思った。日頃からロックで常識ぶち壊せ!音楽ででけー夢掴むんだ!って言ってたとしても、どこか頭の片隅に"大人の自分"がいる。デューイはそうじゃないだろって子供達に教えてきたし、純粋にそれを受け入れられた子供達だからこそ、大人しく諦めそうになったデューイに今度は逆に、そうじゃないだろって教えに来るのが最高にエモい。

ほんで曲も最高に良いよね。おっさんが個人的な恨みつらみを音楽に乗せたやつよりも、親に縛られた10歳が自由を求めて腹の中から出た言葉の方が曲の持つパンチの重さが違う。それを素直に、自分の曲よりお前の曲の方が良いって言えるところも、デューイにとって音楽は私的な道具じゃなくて神聖なものなんだってのが伝わってくる。

こういう系だと『フィッシュストーリー』も似たような感じで好きだったなぁ。『ボヘミアン・ラプソディ』も好きだったし、僕、音楽やってます系の映画が好きなのかもしれない
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