マーくんパパ

櫂のマーくんパパのレビュー・感想・評価

(1985年製作の映画)
3.6
宮尾登美子原作、自身の出自原点となる高知で女衒屋営む父(富田岩伍:緒形拳)と養母(喜和:十朱幸代)の波乱の人生を描く。宮尾は劇中、女義太夫巴吉の産んだ娘綾子と同一。女は男に絶対服従の家父長制度全盛時代、岩伍は義侠心に厚い傍ら、女出入りも盛んな陰で家を切り盛りする喜和の貧窮と心労、愛憎を十朱が熱演。この世代の女優(浅丘ルリ子、加賀まりこ、松原智恵子、吉永小百合etc)の中では何故か一番のお気に入り、中年以降の色気が断トツです。病弱長男は賭場の諍いで死に、次男は受刑明けても父に似て放蕩生活、これに気立て優しく育つ貰い子の菊(石原真理子)、高知一の芸妓に仕込まれる豊美(名取裕子)そして綾子らの成長人生と、夫から益々蔑ろにされ隅に追いやられる喜和がやや駆け足で語られる。情と非情を併せ持ち自分を制御出来ない女衒士緒形、俺のやることに口出すな、黙って従いて来いの捻じ曲がった男気演技で十朱幸代を浮き立たせています。