アニマル泉

性の放浪のアニマル泉のレビュー・感想・評価

性の放浪(1967年製作の映画)
4.0
若松孝二が「蒸発人間」をテーマに撮った。何故か列車で目が覚めると田舎の漁村に着いた山谷初男が彷徨う、つげ義春の漫画みたいな物語だ。望遠レンズが効果的で、迫りくる波が背景になる海辺の情事の場面、道を歩く山谷の長玉ショットが素晴らしい。本作は「海」の映画であり、よく「歩く」映画だ。ツィゴイネルワイゼンが劇伴奏として響く。中盤からかかる「シャバダバダ」系のBGMも印象的だ。山谷は恐妻家のEDという設定で常に妻の声が現実音に重層的に被ってくる。幻聴による多重の声が面白い。若松はジャンプカットや黒コマを多用してゴダールっぽい。映像と音のシンクロは無視して何でもぶち込んでいく。海女小屋の売春、突然の警官殺し(殺人犯は小水ガイラで日本刀を振り回す)、盗み、強姦などの犯罪は若松らしい。白黒シネスコ。
アニマル泉

アニマル泉