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人生の幻影のENDOのレビュー・感想・評価

人生の幻影(1984年製作の映画)
4.2
季刊リュミエール 3『特集 ハリウッド50年代』にこの映画の全訳が掲載されています。『いつも明日がある』においてマクマレイの子供たちが「何てハンサムなカップルなのかしら?」と呟く彼らこそが観客であり幼いアメリカ人であることを象徴し、ハッピーエンドを相対化する。ハッピーエンドは現在そのものであり絶えず始まり、絶えず終わる。堂々巡り。その思想はアッシリアのレリーフに描かれた『走者としての死』を幼い頃にハンブルグの美術館で観たことで生じたそうです。円環をなして走り回り、また戻ってくる。「明日は必ず来る」とはすべてを先送りにすることでもある。アメリカ人の恐ろしいまでの楽観主義。鏡によって自己認識が生じ、枠によって深さが生じる。要約できないサークの口から発せられる言葉、盲目に近い眼に惹きつけられたまま時が通り過ぎました。
モラリストという言葉に警戒し自己検閲を省みるサークの精神は、SNSに蔓延る自分の正義を疑わぬ人々に、いつも問い返すべき現代的なモノだと思いました。
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