ぽかぽか

あしたの私のつくり方のぽかぽかのレビュー・感想・評価

あしたの私のつくり方(2007年製作の映画)
4.2
圧倒的な慎ましさ。邦画は良質な百合映画の宝庫だ。日本映画にしか作れないものがここにある。太宰治を共通項として成海璃子がガラケーのメールで前田敦子に恋愛アドバイスやら自作の創作小説を送り続けるという最高の話。2人が初めて電話するシーンでビデオ通話にしようと言って黒い背景の真正面ショットになるところで泣いた。ここではベタで分かるようなことしか言ってないんだけど、そのベタを丁寧にちゃんと言葉にすることで素直に感動できる。序盤の図書室で話すシーンでは前田敦子が奥に座り手前の方に成海璃子が座って、同じ方向を向いて少し離れたまま会話するが、そのまま2人は向き合って会話することなく物語は進む。そしてビデオ通話でようやく2人は対面する。しかもそれは本当に向き合っているわけではなく、顔の切り返しによって向き合っているかのように表され、次には2人が並んでいる画面になりやっぱり向き合っていないというような表現になる。ふたりはここで「会いたかった」と言いあって"出会い直す"。『あしたの私のつくり方』、本当に良いタイトル。明日への変化を肯定しつつ、他でもない「今」を生きるということ。新しい私に出会い直す毎日を続けていくということ。父親が石原良純で兄が柄本時生という配役もオモロいし、文芸部の顧問が体育教師みたいな若めの男なのも素晴らしい。
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