がぶりえる

大人は判ってくれないのがぶりえるのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
4.0
美しきジャン=ピエール・レオを見る

とても辛辣に心に突き刺さる映画。うだつの上がらない父と子供に強く当たる母。学校という閉塞的で、役に立つのか立たないのか分からない授業と課題で評価される異空間。母の浮気、友人の裏切り、自分を捨てた肉親...そりゃ逃げ出したくなるよな。子供にとってあまりにも優しくない世界。つめたーく、くらーく、じわーと闇に誘われていく。ジャン=ピエール・レオの社会に対する不満から生まれる反抗心と孤独が表れた眼差しに何度も心が締め付けられた。

ラスト、何の相談もせずに鑑別所送りにした挙げ句、「あなたにはここがお似合いよ」と言い捨てて去ってゆく母親のシークエンスから、ジャン=ピエール・レオがサッカーの試合中に逃げ出して海の方に走ってゆくシークエンスまでは本当に言葉を失う苦しさ。何でこんなに幼い子がこんな目に...と思うとやるせなくて仕方無い。カメラの方を真っ直ぐに見つめて、我々に何かを訴え掛ける様な視線を投げかけてくるラストカットは強烈だし、映画として巧いなぁと思った。子供は大人に比べて圧倒的に無力だし、立場が弱いからこそ守ってあげなきゃいけない存在なのに、簡単に責任を放棄して子供を見捨ててしまう大人で溢れる社会があってはならない。それに、子供を評価する軸が勉強一本なのはやっぱりおかしいし、その軸にそぐわない者を出来損ない呼ばわりして劣等感を感じさせるような教育方法は間違っていると思う。
どうしたら平等に自由を獲得できる社会になるのか考えさせられた。