カイト

大人は判ってくれないのカイトのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
3.7
【映画鑑賞批評③】
アスペクト比が横比率高めだからロングショットでも情報がしっかり入り、ワンカット内での移り変わりが上手く描かれていた。特にオープニングの長尺のパリの街並みと途中途中出てくる車、人形劇を見ている幼児の表情の移り変わりが良かった。また、体育の授業らしき時に生徒が段々と抜けていく様を俯瞰で撮っているのが面白さ溢れていて良かった。母親の不倫現場らしきものを見ても、ゆすったりせず父に告げ口もしないというアントワーヌ行動がただただ楽しく自由に過ごしたいという気持ちが強く出ているように感じた。そして、母親と父親と映画を観に行き、家に帰ってくる様は一般的な家族の幸せが具現化されていてほのぼのした。人形劇に釘付けになっている幼児と映画を楽しむアントワーヌが対照的に描かれ、何も考えずに自由に過ごせる幼児と社会的に柵が設けられている少年たちの不憫さが感じられた。大人になったという自覚がないまま、社会的に大人という枠に当てはめられるが法的に大人になっていないため親の保護下に置かれ自由を手に入れられない。そんな中、叔母のお金をくすねて喜ぶ二人は音楽と共に希望と楽しさが伝わってきた。なんとなく、できることが少ない中背伸びし自由を求めていく様がディズニーのピノキオの様に感じた。また罪を犯して入れられた牢屋は社会においてのアントワーヌの肩身の狭さを表していて、少年施設ではそのような子供がたくさんいるということを表していると感じた。ラストシーンの逃亡のロングショットは大人の手から遠く遠く逃れたいというアントワーヌの想いが演出されている様に感じ、海を求めて走っても結局そこは行き止まり、社会の檻から逃れられない子供ということを表しているのだと感じた。
カイト

カイト