平和を祈るヒツジくん

紅の豚の平和を祈るヒツジくんのレビュー・感想・評価

紅の豚(1992年製作の映画)
5.0
「かっこいいとはこういうことさ」
大人向けのジブリ映画なので、この前の金曜ロードショーで見るまで作品の面白さが分からなかった。なぜポルコが豚になったのか?
最後ポルコが豚から人に戻れたのも何故か分からなかった。

1930年、第一次世界大戦の不安から世界恐慌が起きファシズムが台頭してきて、それに対抗したアナキスト達がテロを起こしていたイタリア。不安定な政治情勢を知っていないと紅の豚の世界観が掴めないだろう。
「モリモリ食べてビシバシ働こう!」がとても好きな言葉だ。不安定な世界でも働きざかりの人々がいて、恋に燃える人々もいる。
紅の豚も『風立ちぬ』のように飛行士のロマンとその夢の犠牲を描いている。ポルコが豚になったのは「なぜ戦友は死んでいったのに自分は死んでいくんだ」という自己嫌悪から来るもの。『ハウルの動く城』のソフィーみたいに自分で自己嫌悪の魔法を掛けているのだという。宮崎駿監督は鈴木プロデューサーから「なんでポルコは豚になったんです?」と聞いたら宮崎監督は怒り「謎をいちいち説明しているから日本の映画はダメなんだ」と黙りこくったという(次の日には説明してくれたそうだが。ジブリ映画は国語の教科書の話みたいに何度も読んで意味を探らなければいけないみたいだ。
1930年代は飛行機乗り達が憧れるカッコイイ水上機の時代から、戦争がビジネスになる苦しくつまらない時代への転換期だという。

エンディングの『時には昔の話を』で思わず涙が出てしまった。大人になって初めてこの作品の魅力を知った。
ポルコが豚から人に戻れたのは「フィオが純粋な少女で、ジーナではなく彼女の純粋な愛でなければポルコは人に戻れなかった」という童話チックな理由だ。子供の純粋さは見習うべきだというメッセージだろうか。

紅の豚視聴後は宮崎監督の「心の旅」を見るのをオススメします。監督がなぜ飛行機乗りに恋焦がれるのか、サン=テグジュペリやその他飛行士に関わる話を聞けるので貴重です。