ソウキチ

紅の豚のソウキチのレビュー・感想・評価

紅の豚(1992年製作の映画)
-
はじめて観たけどなるほど、『風立ちぬ』とはまさに対極のような映画。
『風立ちぬ』が自らの夢の為に犠牲にしたものへの贖罪の映画だったのに対して、ここには宮崎駿の快楽とロマンしか描かれていない。
そしてこれが面白いんだからやっぱり罪だ。

ポルコが自らにかけた呪いは、自らの過去や戦争への決別なんだろう。同時にそれは反社会主義者になるということだし、一般的な幸せも愛も諦めるってことだ。俺は普通の幸せなんていらないし、豚でもいいから自由に空を飛んでいたい。
きっと宮崎駿にとっての憧れで、彼にとってかっこいいとはまさにこういうことだったんだろうと思う。

そこには本当の悪人なんて出てこないし、誰もが自分の人生を謳歌している。夢の世界。
戦争のシーンも描かれているけど、悲惨さの欠片もなく、ただただ美しさだけの世界。

この天才の理想郷を極上のエンタメに昇華した『紅の豚』のその20年後、結局何もかも捨てられなかった男が引退作に『風立ちぬ』という狂気の傑作を作る。
無視できない繋がりを感じました。

ていうかピッコロのおやじ、もろ本人だしな笑
あと加藤登紀子さんの主題歌がとても良い。
ソウキチ

ソウキチ