湯っ子

夕なぎの湯っ子のレビュー・感想・評価

夕なぎ(1972年製作の映画)
3.8
やばい、誰にも感情移入できない…と思いながら観ていたが、3人の中でセザールにだけは愛があったかもしれない。前半の暴君ぶりにはほぼ拒絶反応まで覚えたけど、情けないビーチでのスーツ姿とか、目に砂が入って大騒ぎするところとか見てたらちょっとかわいく思えてきた。
さらに、ロザリーのために恋敵ダヴィッドに戻ってくるように懇願するところとか、滑稽だけど、彼なりにロザリーを愛してたんだと思う。でも、ダヴィッドとロザリーには心を感じない。この2人って、一体何がしたいんだろう、よくわからなかった。この先も「突然いなくなることで相手の気を引く」「また突然あらわれることで相手の気を引く」を繰り返して生きていくのか。
このロザリーの性癖は、やはり恋多き母親の影響ということなのかな。めちゃかわいい娘ちゃんが年頃になって、「ママにはたくさんの恋人がいたけど、誰のことも愛してなかったわね!」とかバトルするのかなぁ…そっちのが観たいなあ…とか思ってしまった。
ラスト、セザールとダヴィッドの「きのう何食べた?」的朝食シーンに迫り来るロザリーに、「やめて…2人の幸せを壊さないで…」と願ったのは私だけだろうか。
「ロザリーとは憎み合ってるわけじゃない、愛し合ったこともないが」って語る元夫がいちばん相性良さそう。でも、相性のいい相手=愛する人ってわけじゃないもんね。
自信満々の暴君かと思えば、頼りなげなおじいちゃんにも見えたりするイブ・モンタンが良かった。ロミー・シュナイダーはエレガントさと軽やかさを兼ね備えていて、血統書付きの猫みたい。ファッションも素敵だった。
湯っ子

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