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古都のBaadのレビュー・感想・評価

古都(1980年製作の映画)
3.8
山口百恵の引退記念の作品。監督は市川崑。

脚本が圧倒的に良く出来ていて、1963年の原作に忠実だという作品より厚みのある見応えがある人間ドラマに仕上がっている。山口百恵の演技にも説得力があり、特に北山杉の村で働く双子の妹の苗子の役はよくはまっていた。

この二人を好きになる若い男性達がそれぞれに個性的なのだが、一様に芯の強い爽やかさが伝わってくる。が、そんな男性達を尻目に、ドラマはむしろ呉服問屋で育てられた千重子と義母(岸恵子)、千重子と苗子の双子の姉妹という女同士の細やかな愛情のあり方をセリフや動作で丁寧に肉感的に映し撮っていく。
この三人の女性の女としてのしなやかさ、強さが素晴らしい。

岸恵子、山口百恵とも関東の出身でほぼ同郷なので、最初は発声の仕方が関東風なのが少し気になったのだが、それもすぐ気にならなくなった。岸恵子の演技は特にリアルで素晴らしかった。

撮影されたのが1980年という中途半端な時期だったことが災いしたのか、京都の町並みの撮影は随分と苦労したのであろうということが伺われ、とうてい昭和20年代末には見えないことと、千重子の着る着物がいかに地味好きという設定でも今一つ垢抜けないのが気になって少し作品に集中するのを妨げたが、衣装やまちなかの風景にさえ少し目をつぶれば見事な映画だと言えるだろう。

当時からすでにあった着物産業の衰退の兆しが物語に深みをもたらしているが、それが衣装に出てしまっているのがとても残念だ。

(2012/9/28 記)
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